とは、何と云つても新劇協会に感謝すべきであらうと思ふ。
これは、まさしく、新劇協会の演出が、真摯で、控へ目で、大きく羽目を外してゐない証拠である。
○それならば、新劇協会は『桜の園』の上演に成功したか。待つて下さい。失敗しなかつたことは、成功したことにならない。しかし、もの事によつて、それに失敗しないと云ふことは、ある事に成功したと云ふことよりも尊く、意義があり、名誉であり、意を強くすべきことである。
○此の種の劇団に対しては、「未来」と云ふことを考へずにかれこれ批評をしてはならない。
○それだけに、「未来」がないと云はれることは、此の種の試みに取つて致命的な痛手である。この『桜の園』を見て、新劇協会は失敗したと云ふものがあるかも知れない。しかし、それ以上のことを言つてはならない。
○僕はたゞ此の劇団の首脳に信頼する。情実と名利を棄て、「初めから始める」ことによつて、「存在の欲求」を満たしてほしい。現在の日本に於ては、それが許される。
底本:「岸田國士全集19」岩波書店
1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「我等の劇場」新潮社
1926(大正15)年4月24日発行
初出:「演劇新潮 第一年第六号」
1924(大正13)年6月1日発行
入力:tatsuki
校正:Juki
2006年2月20日作成
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