『ハイカラ』といふこと
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)気障《きざ》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)どんより[#「どんより」に傍点]
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近頃の若い人達は、もうこんな言葉は使はないかもしれないが、それでも、言葉そのものは、まだなくなつてはゐない。
「あの男はハイカラだ」といへば、その男がどういふ風な男であるかは問題ではなく、寧ろ、さういふことをいふ人間が、どんな人間であるかを知りたいほどの時代になつてゐるのかもしれない。
一体、この「ハイカラ」といふ言葉は、だれがどういふ機会に作りだし、いつ頃世間でもつとも流行したのであるか、私は記憶しないのであるが、なんでもその当時、洋服に「高いカラアをつけてゐる男」は、一般に「低いカラアをつけてゐる男」よりも、「ハイカラ」であつたに違ひない。これは、西洋でもさうなのであるか、私の観察するところでは、必ずしもさうだとは思へないが、洋服を着ることだけでもまだ珍しかつた時代の日本では、たしかに「高いカラア」をつけることが、いはゆる「ハイカラ」であつたに違ひない。
そこで
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