「不可解」の魅力
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)白《せりふ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ふわつ[#「ふわつ」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)だん/″\。
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 解らない、然し、何だか、かうふわつ[#「ふわつ」に傍点]と来るものがある。少しぢれつたい、が、悪い気持ちぢやない。
 芸術の鑑賞が、常にこれでは少々心細いが、僕はたしかに、今日まで、かういふものにぶつかつたことがある。
 処が、さういふものでも、処々はつきり解る部分がないではない。そして、此の解る部分の魅力が、解らない部分の魅力をかなり左右することにも気がついてゐる。
 僕は、此の解らない部分の魅力といふやつが、相当に好きなんだ。その代り、解る部分がつまらなければ、解らない部分は一向に魅力をもたない。まあ、さういふことになる。信用といふものは恐ろしいものですね。
 実は築地小劇場で、「朝から夜中まで」を観たんです。
 第一あの脚本であるが、銀行の出納口からホ
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