「悲劇喜劇」発刊について
岸田國士
私が雑誌を出すといふ話をすると、友人のあるものは、「そんな必要があるか」と問ひ返す。「面倒な仕事だからよせ」と云ふものさへある。
私はたゞ笑つて之に応へてゐるのだが、実際私自身の気持としては、是非雑誌を出さなければならないといふ理由もなく、それがまたどんなに面倒な仕事か、ほゞ想像もついてゐる。
そんならどうしてこんなことを思ひ立つたかと云ふと、私自身が、今、ある種の雑誌を読みたいのに、さういふ雑誌が一つもない、何処からか出さうなものだが、なかなか出てくれない、殊に、さういふ雑誌を求めてゐるのは私一人ではあるまい、と、かういふやうな考へから、いつそ、出してくれる本屋さへあれば、自分で編輯して見てもいゝ、依頼すべき有力者はいくらもある、よし、やれるところまでやつて見ろ、といふことになつたまでゞある。
幸ひ第一書房は私と縁故も深く、房主長谷川巳之吉君は、演劇そのものに少なからぬ同情をもつてゐられるので、話は思ひの外早く運んだ。最初、私は、極く内輪に計画を立てたのだが、長谷川君は、どうせ出すなら立派なものをといふので、頁数こそ少いが、体裁内容とも充
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