「悲劇喜劇」の編輯者として
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)詩学《アアルポエチツク》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)われ/\の
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 今日までかういふ種類の雑誌があつたかどうか、いはゆる「公器」としては、あまりに個人本位であり、いはゆる「同人雑誌」としては、あまりに門戸開放に過ぎると思はれる、一雑誌の存在は、当今、少しく時代錯誤の観がないでもないが、流行は必ずしも一世の識者を悉く眩惑し去るものではないと思ふから、私は、好んで自分の立場を守ることにした。
 敢て野心的な言葉を弄するなら、私は、この雑誌によつて、日本の新劇運動に一つの新しい方向を与へようと思つてゐる。
          ×      ×      ×
 シエイクスピイヤの「翻案」とイプセンの「紹介」より出発した日本の新劇史は、少くとも結論に到達してゐる。
 クレイグ、ラインハルトを経て意識構成派にミザンセエヌ(舞台構成)の理論は、徒らに写真師をしてマグネシウムをたかしめたに過ぎない。
 その証拠に、われ/\の周囲は、われ/\の友人は
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