て農業者は、この季節には、その全部の家畜をそこに送り、これをその家族の一部の監督に委ねる。そして彼らが販売用または自家用のバタやチイズを全部作るのはここである。そこで非常に困難なことは、その家畜を長い冬の間養うことであり、そのためには、谷間の最も肥沃な広い土地が乾草の刈取に当てられなければならぬ。もし過大な土地が耕作に取られると、家畜の数はそれに比例して減らされなければならず、そして高地の大部分は絶対に無用になってしまうであろう。そしてこの場合、この国が全体としてより[#「より」に傍点]大なる人口を養うことになるか否かは問題であろう。
 しかしながら、これら一切の障害があるにもかかわらず、ノルウェイには非常に大きな改良の余地があり、それは最近行われはじめている。コペンハアゲンの一教授から、私は、ノルウェイの農業の進歩がかくも緩慢であったのは、改良農業の範を示し、そして農業上の父祖伝来の無智と偏見を打破すべき郷紳がいなかったからである、と聞いた。私がノルウェイで実見した所からすれば、この欠陥は今はある程度除かれたと云いたい。多くの聡明な商人や事情に通じた一般官吏が現在農業に従事している。
前へ 次へ
全434ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
吉田 秀夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング