フ死亡数と比較しての結婚は(再婚及び三婚につき修正を行っても)、産児のうちで結婚まで生存するものの真の比率を表わすにははなはだしく大に過ぎるであろう。かかる国では、吾々は、平均死亡年齢は四〇歳、結婚年齢はわずかに二〇歳と想像してもよかろう。かかることは稀であろうが、しかしその場合には、結婚と死亡との間隔は出生と結婚との間隔と等しいであろう。
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〔訳註〕第三―五版にはここに『絶対的に』の語がある。
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 以上の観察を記録簿一般に当てはめるならば、吾々は、出生、死亡、結婚の比率は変化するのであり、また平均結婚年齢はわからないのであるから、産児のうち結婚まで生存するものの真の比率を見出し得ることは滅多にないのであるけれども、しかも吾々はそこに含まれる知識から多くの有益な推論を下し、また若干の外見的な矛盾を調和することは出来る。そして結婚が死亡に対して極めて大きな比率をとる国においては、結婚年齢は平均死亡年齢よりも遥かに若いと信ずべき理由があるのが、一般にわかるであろう。
 トゥック氏が作り本書六二頁に引用した一七九九年のロシアの表では、結婚の死亡に対する比率は、一〇〇対二一〇となっていた。再婚及び三婚につき修正を行って結婚から六分の一を控除すれば、それは一〇〇対二五二となる。これによると二五二の出生のうちその二〇〇が結婚まで生存したということになるようであるが、しかし吾々は、二五二のうち二〇〇が結婚まで生存するというほどに健康的な国というものは、考えることが出来ない。しかしながら吾々が、ロシアの結婚年齢が平均寿命すなわち平均死亡年齢よりも一五年若いと仮定すれば――これは妥当な仮定と思われるが――結婚まで生存する比率を見出すためには、吾々は、今年の結婚を一五年後の死亡と比較しなければならない。出生の死亡に対する比率を(六二頁で述べた如くに)一八三対一〇〇、死亡率を五〇分の一と仮定すれば、年増加は人口の約六〇分の一となり、従って一五年にして死亡は〇・二八やや強増加しているであろう。そしてその結果は、結婚は一五年後の死亡と比較して、一〇〇対三二二ということになろう。すなわち三二二の出生のうち、二〇〇が結婚まで生存することになるであろうが、これはロシアの子供の周知の健康性と、結婚年齢の若いことから見て、あり得べき比率である。結婚の出生に対する比率は一〇〇対三八五であるから、結婚の出産性は、前述の法則により、一〇〇対四一一となり、すなわち各結婚は、再婚及び三婚も含んで、平均して四・一一の出生をもたらすであろう。
 ロシアに関する章の初めの方に載せた表はおそらく正確でなかろう。出生にも死亡にも、なかんずく死亡には、脱漏があると考えて差支えなく、従って結婚率は過大になっている。ロシアにおけるこの大きな結婚率には、このほかになお理由があり得よう。カザリン女帝は、新法典に対する教書の中で、両親が、未だ実際は子供である息子を、女奴隷を買う費用を省く目的で、成人の女子と結婚させるという、農民の間に一般に行われている習慣に、言及している。これらの女子は一般に父の情婦になると云われており、女帝はこの習慣は人口増加に有害なものとして特にこれを非難したのである。この慣行は当然に、再婚及び三婚の数を通常以上に増加せしめ、そして云うまでもなく、記録簿における結婚の出生に対する比率を通常以上に増大させるのである。
 『フィラデルフィア協会会報』Transactions of the Society at Philadelphia (vol. iii. No. vii. p. 25.) には、『合衆国における生命蓋然率に関する諸観察』Observations on the Probability of Life in the United States. と題するバアトン氏の一文が載っているが、それでは、結婚の出生に対する比率は一対四・五となっている。彼は実際は六・五と云っているが、彼れの数字からは四・五にしかならない。しかしながら、この比率は主として都市からとられたものであるから、出生はおそらく低過ぎることであろう。そして教会と地方との平均としては五と考えて十分差支えなかろうと思う。同じ典拠によれば、死亡率は約四五分の一である。そしてもし人口が二十五年ごとに倍加するものとすれば、出生は約二〇分の一であろう。結婚の死亡に対する比率は、以上の仮定に立てば、一対二・九分の二となり、そして再婚及び三婚について修正を行えばほぼ二対二・七となろう。しかし、二七の出生の中《うち》二〇が結婚まで生存するとは考えることが出来ない。しかしながらもし、結婚年齢が平均死亡年齢より十年若いとすれば――これは極めてあり得べきことであるが――吾々は、産児
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