トいることが見られた人口に対する妨げは、明かに、道徳的抑制、罪悪、及び窮乏とすることが出来る。』
[#ここで字下げ終わり]

    一八二五年(訳註――本章の以下の部分は第六版のみに現わる。)

 最近の一八二一年の人口実測によれば、愛蘭《アイルランド》の人口は六、八〇一、八二七であるが、一六九五年にはそれはわずかに一、〇三四、〇〇〇と見積られた。もしこれらの数字が正しいならば、それは、一二五年間を通じて、約四五年ごとに倍加する如き速度で人口が継続的に増加した実例を提供するものであるが、これは、おそらく同じ期間に亙りヨオロッパの他のいかなる国に生じたよりも急速な増加である。
 愛蘭《アイルランド》の特有の事情から見て、平均死亡率、及び出生、結婚の人口に対する比率を知るのは極めて興味あることであろう。しかし不幸にして、何らの正確な教区記録簿もつけてなく、従ってこれらのことはいかに望ましくも手に入れることが出来ないのである。
[#改丁]

    第十一章 結婚の出産性について(訳註)

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〔訳註〕本章は、第二版では、ロシアを論じた章の次の第四章となっており、主としてロシアと関係あるものであったが、第三版から書き改められて、この場所に移された。第二版の訳文は本章の終りの方に載せる。
[#ここで字下げ終わり]
 各国の出生、死亡、及び結婚の記録簿、並びに実際人口と増加率とから、結婚の現実の出産力、及び結婚まで生存する産児の真の比率を、演繹し得ることが、極めて望ましいであろう。この問題はおそらく正確な解決を与え得ないかもしれないが、しかし吾々は、次の如き考察に留意するならば、幾分か正確な解決に近づき、そして多くの記録簿に現われている困難の若干を説明することが出来るであろう。
 しかしながら、たいていの国の記録簿では、出生及び死亡の脱漏の方が結婚の脱漏より多いと信ずべき理由があり、従って結婚の比率はほとんど常に過大になっているということを、前提しなければならぬ。我国で最近行われた人口実測では、結婚の記録はほとんど正確と考えて差支えないのに、出生及び死亡には非常に大きな脱漏のあることは確実に知られている。そしておそらく同様な脱漏は、程度はおそらく同一ではなかろうが、他の諸国一般にもあることであろう。
 もし吾々が(訳註)人口は停止的であり、移民の出入も私生児もなく、出生、死亡、及び結婚の記録簿が正確であり、かつ引続き常に人口に対して同一の比率を採るところの、一国を、想定するならば、年出生の年結婚に対する比率は、再婚及び三婚をも含んでの各結婚当りの産児数を現わすこととなり、また再婚及び三婚について訂正を加えるならば、それはまたしばしば結婚まで生存する産児の比率をも現わすであろうが、他方年死亡率は正確に平均寿命を現わすであろう。
[#ここから2字下げ]
〔訳註〕このパラグラフを含んで以下三パラグラフは第六版のみに現わる。
[#ここで字下げ終わり]
 しかしもし人口が増加か減少かしつつあり、また出生、死亡、結婚が同一率で増加または減少しつつあるならば、かかる運動は必然的に一切の比率を攪乱するであろうが、けだし、記録簿では時を同うする出来事も自然の順序では時を同うするものでなく、そして増加または減少がその間に起りつつあるに違いないからである。
 第一に、ある年の出生は、自然の順序では、時を同うする結婚から生ずるものではあり得ず、主としてそれよりも前の年の結婚から生ずるものでなければならない。
 では、再婚及び三婚を含む任意に選んだ結婚の出産性を断定するために、ある国の記録簿の一定期間(例えば三〇年)を切り離し、この切り離された期間に含まれる一切の結婚によって生れた出生を、調べてみよう。この期間の初期の結婚が、この期間に含まれない結婚から生ずる多数の出生と併置され、またその終期には、この期間に含まれる結婚から生れた出生が、その次の期間の結婚と併置されることは、明かである。さて、もし吾々が前者の数を控除し、後者を加算することが出来るならば、吾々はこの期間の結婚によって生れた一切の出生を正確に知り、そしてもちろんかくの如き結婚の真の出産性を知ることが出来るであろう。もし人口が停止的であるならば、加算すべき出生数が控除すべき出生数と正確に同数であり、記録簿に見られる出生の結婚に対する比率は正確に結婚の出産性を表わすであろう。しかし人口が増加か減少かしつつあるならば、加算せらるべき数は控除せらるべき数と決して同数でなく、そして記録簿の出生の結婚に対する比率は、決して結婚の出産性を正しく表わさないであろう。人口が増加しつつある場合には、加算せらるべき数は明かに控除せらるべき数より大であり、そして云うまでもなく記録簿に現われた出生の結婚
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