の中《うち》、多くの者は、このように事情が変化したので結婚したのであろう。そして、一八歳未満の青年の極めて多数が、徴兵忌避の目的をもって、尚早にして結婚生活に入ったことは、周知のことに属する。これは極めて広く行われ、また未婚者の数を極めて減少せしめるに役立ったので、一七九八年の初頭には、既婚者を徴兵から除外する法律を廃止するの必要が認められ、そしてこの新法公布後に結婚した者は未婚者と無差別に徴集せられた。そしてこれ以後には、この国の人口増加に事実上寄与している者からも一部分徴集が行われたけれども、しかもこの徴兵を免れた結婚数はなお依然革命以前の通常結婚よりも大であった。そして夫の徴集によって破れた結婚といえどもおそらく全然子供を生じなかったわけではなかろう。
 サア・フランシス・ディヴェルヌワは、確かにフランスの損害を誇張する傾向を有ち、またおそらくかなり誇張していると思われるのであるが、彼は一七九九年までのフランス軍隊の陸海を通じての全損失を、百五十万と見積っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この問題を例証するために私のとった概数はサア・フランシス・ディヴェルヌワ氏の見積りよりも六十万だけ多い。しかしながら彼は、革命に伴う他の破壊原因による死亡をこの上百万人計上している。しかしこの損失はあらゆる年齢あらゆる性に無差別に生じたのであるから、同じ程度には人口に影響を及ぼさず、従ってサア・フランシスの計算以上に生ずる血気旺んな六〇〇、〇〇〇の男子によって相殺されて余りあるであろう。更におそらく、革命戦の後期においては、徴兵が旧領土よりも新領土において更に厳重に行われたのであり、そしてこれら新領土の人口は五、六百万と見積られているから、それは軍隊で死んだと想像されている百五十万人のうちの大きな比率をなしたことであろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] Tableau des Pertes, etc., c. ii. p. 7. ――ガルニエ氏は、そのアダム・スミス仏訳版の註において、フランス人口のわずかに六十分の一が戦死したに過ぎぬと計算している。彼は、直ちに編成されたものはわずかに五〇〇、〇〇〇に過ぎず、戦争中にこの数に追加されたものは四〇〇、〇〇〇であると想像し、そして自然死を遂げたものの数を斟酌した上で、戦争のために増加した死亡はわずかに毎年約四五、〇〇〇に過ぎぬと想像している。Tom. v. note xxx. p. 284. もし実際の損失が、ここに述べてあるところ以上に出でぬとするならば、出生のわずかの増加がこれを容易に恢復したことであろう。しかし私は、これらの推算は、サア・フランシス・ディヴェルヌワの推算が過大であると同程度に、過小である、と考えたいのである。
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 革命の初期において(訳註)離婚を大いに便ならしめた法律は、道徳的見地からも政治的見地からも極めて悪法であったが、しかし、それは男子が非常に不足しているという情勢の下において、それはいささか一夫多妻の慣習のような作用をし、そして夫の数に比例して子供の数を増加させたであろう。これに加うるに、夫のない婦人が全部子供を産まないとは思われない。私生児の出生総数に対する比率は、革命前の四七分の一から現在一一分の一に増大している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてこれは道徳的堕落の憂鬱な証拠ではあるけれども、たしかに出生数の増加には寄与したであろう。そしてフランスの農婦は。革命期間中は、人手が足りないので、通常以上の所有をあげることが出来たから、おそらくこれらの子供達の多くは生き永らえたことであろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] Essai de Peuchet, p. 28.
〔訳註〕『革命初期において』なる語は第五版より現わる。その他用語上の若干の修正がある。なおここでパラグラフが改められたのは第六版からである。
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 これら一切の事情の下において、フランスの農業が生活資料を無事に保証し続ける限り、その人口が、革命の進行中働いた一切の破壊原因にもかかわらず、依然減少しなかったということは、不可能ではあり得ぬのであり、またありそうもないことですらないことが、わかるのである。そして、いかにはなはだしくフランスの工業が損害を蒙ったにしても、その農業は衰滅よりはむしろ増進したことは、今では一般に認められているように思われる。戦争中のいかなる時期においても、召集された軍隊の数が、革命前に工業に従事していた人間の数を超過した、と考えることは出来ない。これらの工業の破壊によって失職し、しかも軍隊に加わらなかった者は、もちろん農業に参加したことであろう。そしてフランスで
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