ざれば自分も家族も餓死してしまうという最も明かな危険を犯すことになるであろう。この事情はノルウェイの場合よりもいっそう甚だしいのであり、また出生と死亡とがほとんど等しいという事情からして特にはっきりと現われるのである。
 父親が不幸にして普通以上の大家族を有つならば、その結果として結婚数は増加よりはむしろ減少の傾向を示すであろう。彼はおそらくその小さな所有地で子供達全部に適当な仕事を見出すことは出来ないであろうが、しかしたぶん倹約すればその全部を家庭で食わしていくことくらいは出来るであろう。しかし子供達は明かに長い間かからなければ父親の許を去ることが出来ぬであろうし、また息子の中で最初に結婚するのもおそらく父の死後となるであろう。しかるにもし父親が二人しか息子を有たなかったとすれば、その一人はおそらく親の家を去ることなくして結婚することが出来ようし、またもう一人は父の死と同時に同時に結婚することが出来よう。おそらく一般的に云って、四人の未婚成年がいるかいないかが、この上結婚して新家庭をつくる余地があるかないかの差異を作り出すものと、云い得るであろう。
 この教区では、ほとんど例外なしに、極めて晩婚であり、しかもその位置が極めて健康的であるために夫婦の一方の死亡による結婚の解消は極めておそいのであるから、現存する結婚の大部分では夫婦の年齢が非常に進んでおり、従ってたいていの婦人は子供を産まなくなってしまっていることは、明かである。従って現存結婚総数の年出生数に対する比率は、一二対一という極めて異常な比率であることがわかった。出生率は人口のわずかに約四九分の一にすぎず、そして十六歳以上の者がそれ以下の[#「以下の」は底本では「以上の」]者に対する比率は約三対一であった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 11 and 12.
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 この教区と対照をなすものであり、かつ人口の測定に当って出生数がいかに頼りにならぬかということの証拠として、ミウレ氏は、ユラ地方のサン・セルジュの教区を引合いに出しているが、そこでは、現在結婚数の年出生に対する比率はわずかに四対一であり、出生数は人口の二六分の一で、十六歳以上の者と以下の者との数はちょうど同じであった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Ibid.
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 彼は曰う、これらの教区の人口をその年出生率から判断すれば、レエザンはせいぜいのところサン・セルジュを越すこと五分の一以上ではないと思われるであろうが、しかし実際の計測をすると、前者の人口は四〇五、後者のそれはわずか一七〇であることがわかった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、と。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 11.
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 また曰う、私は、最も著しい対照をなしている教区を選んだのであるが、しかし他の教区ではその差異がそれほどはなはだしくはないけれども、しかも、場所が異れば、距離が非常に近く、また環境の点では明かに類似していても、その比率に著しい差異のあることが、常に見出されるであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、と。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 13.
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 以上の如き観察を下し、また私が紹介しなかった同一傾向を有する他の観察を下して後なお、彼が、ヴォー州の人口減退の証拠の全部を出生率に求めているのは、奇妙なことである。この比率は時期を異にし位置を異にするにつれて異るものではないと想像すべき十分の理由はない。レエザンとサン・セルジュとの二教区の出産性の著しい対照は、時間と事情との力が変化し得る原因に依存している。サン・セルジュでは成人に達する子供の数の比率が大きいところから見れば、その自然的健康性はレエザンのそれに比して遥かに劣るものではないことがわかる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。その出生の死亡に対する比率は七対四であった2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。しかしその全住民数は一七一を越さなかったのであるから、この大きな出生超過が、過去二世紀の間、規則正しく人工に附加され得なかったことは、明かである。従ってそれは、近年この教区の農業または取引が急に増大したのによるか、または移住の習慣によるかの、いずれかによって起ったものに相違ない。私は後者の仮定が正しいと思う。そしてそれは、前述の成人の比率がより[#「より」に傍点]小である事実によって確証されるように思われる。この教区はユラ地方に位置を占め、パリからジュネエヴに至る大
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