れる。現実の人口はおそらくそれによって減少さえすることもあり得よう。けだし栄養不良と人家の密集とにより伝染病がひとたび発生する時には、それは常に必ずしも過剰人口を除去した時に終了するとは限らず、それと共に、その人口のうち国が十分養い得る一部分、しかも往々にして極めて大きな部分をも、除去してしまうからである。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔Me'moires du Royaume de Sue`de, c. vi. p. 188.〕
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 農業上の主作業が必然的に夏の二、三箇月の短期間に限らなければならぬあらゆる北国地方では、この期間の人手不足はほとんど不可避的に生ずるであろう。しかしこの一時的不足は、単に二、三箇月ではなく丸一年を通じて職業と生活とを与える力を意味するところの真実の有効な労働需要とは、慎重に区別しなければならない。スウェーデンの人口は、その増加の自然的過程においては、この有効需要に常に十分応ぜんとしているであろう。そして、これ以上に出ずる供給は、それが外人によるものであろうと出生数の増加によるものであろうとを問わず、ただ窮乏を生み出し得るに過ぎないのである。
 スウェーデンの学者は、スウェーデンでは一定の人数と日数で生産するものは、他のどの国に比べても三分の一に過ぎない、と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。その結果として国民の勤労ぶりに対して強い非難が挙げられている。こうした非難の一般的根拠については、他国人は決して適当に是非の判断を下すことは出来ないが、しかし今の場合では、国民の勤勉が現実に不足しているというよりも、気候と国土とがより[#「より」に傍点]多くその原因となっているように、私には思われる。一年の大部分の間彼らの努力は必然的に峻烈な気候によって妨げられ、そして農事作業に従事し得る時期には、土地が本来農業に適せず、そして一定の生産物を得るに必要な面積が大であるために、比較的より[#「より」に傍点]多量の労働を用いざるを得ない。貧弱な土壌から成る広大な農場が、肥沃な土地から成る小さな農場よりも同一の生産物に対し遥かにより[#「より」に傍点]大なる費用を要することは、英蘭《イングランド》では周知のことである。一般的に云えば、スウェーデンの土壌が本来貧弱であることは否定し得ない2)[
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