しているものはない、と信ずる。この流れは土地を異にするにつれて名称を異にしている。ノルウェイの渓谷の新緑は特殊な柔味があり、木々の枝葉は生い繁り、夏には北方の気候の俤《おもかげ》は更にない。
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従って、スウェーデンの死亡率を説明するためには、人民の習慣と、国民の増加を求める政府の不断の希求とが、人口を生活資料の限界に余りに緊密に圧迫する傾向があり、従って貧困と栄養不良との必然的結果たる疾病を生ずる傾向がある、と想像しなければならぬのであるが、この想像たるや、観察によって全く事実であることがわかるのである。
スウェーデンは、その人口に対し十分な食物を生産しない。一七六八年ないし一七七二年の計算によれば、その毎年の穀物不足額は四四〇、〇〇〇タンである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この分量、またはこれに近い分量が、一般に、外国から輸入されているが、その外になお多量の豚肉、バタ、及びチイズが輸入されるのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Me'moires du Royaume de Sue`de, table xvii. p. 174.〕
2)[#「2)」は縦中横] Id. c. vi. p. 198.
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スウェーデンにおける酒の醸造は四〇〇、〇〇〇タンの穀物を消費するものと推定されている。この醸造が政府により禁ぜられた時には、輸入表には不足額の変化が現れるが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、しかし周知の如く頻々と起る不作の年の不足を補うためのより[#「より」に傍点]以上の変化は見られない。非常に豊饒な年で、醸造が自由に出来る時には、一般に三八八、〇〇〇タンが輸入されていると云われている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。従ってスウェーデン人は、最豊作の年の全生産物と、その上にほとんど四〇〇、〇〇〇タンとを消費し、そして最不作の年にはその消費はその収穫不足のほとんど全額だけ減少しなければならぬ、ということになる。人民大衆は非常に貧困であって、ために非常に騰貴した価格ではほとんど同一量の穀物を買うことは出来ない。従って穀物商人に多量に輸入させるに足る刺戟はなく、従って穀物が四分の一または三分の一不足すれば、その結果として労働者は、以
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