労働の名目価格が普遍的に下落するというのはごく稀である。しかし、食料品の名目価格が徐々として増加して来ているのに労働の名目価格がしばしば依然同一であるという風な場合を、吾々はよく知っている。これは実際上労働の価格の真実下落であり、そしてこの期間中は、社会の下層階級の境遇は徐々としてますます悪化して行かなければならぬ。しかし農業者と資本家とは労働の真実低廉によって富んで行く。彼の資本の増加によって前よりも多くの人手を雇傭することが出来るようになる。従って仕事は多くなり、その結果として労働の価格は騰貴するはずである。しかし、教会法のあるためか、または富者は団結し易いが貧民はそれが困難であるというもっと一般的な原因かのために、多かれ少なかれどの社会にもある、労働市場における自由の欠除のために、おそらく凶作の年が起り、叫声は余りにも声高となり必要は余りにも明かとなってもはや抗し得なくなるまでは、労働の価格は右の当然騰貴すべき時期にも騰貴せず、その上しばらくの間依然として低いままになっているのである。
『かくして労働の価格騰貴の原因は隠蔽される。そして富者は、その騰貴を許したのは、凶作のことを考
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