り1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、生活資料が増加する場合には普《あまね》く増加する。
三、これらの妨げ、及び優勢な人口増加力を抑圧し、その結果を生活資料と平衡せしめる妨げは、すべて、道徳的抑制、罪悪、及び窮乏のいずれかとすることが出来る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
1)[#「1)」は縦中横] 私はこのような用心深い表現法を採ったが、けだし私は、人口が生活資料の水準に達しない若干の場合がある、と信ずるからである。しかしこれらは極端な場合である。したがって概言すれば、次のように云い得よう、
二、人口は生活資料が増加する場合には常に増加する。
三、優勢な人口増加力を抑圧しその結果を生活資料と平衡せしめる妨げは、すべて、道徳的抑制、罪悪、及び窮乏のいずれかとすることが出来る。
ここに生活資料の増加とは、社会の大衆をしてより[#「より」に傍点]多くの食物を支配し得せしめる如き増加の意であることを、観られたい。特定社会の現実の状態において、下層階級には分配されず、従って人口に対し何らの刺戟も与えないような、増加が、確かに起り得よう(訳註)。
〔訳註〕この註は第三版より現る。ただし『ここに生活資料の増加とは』以下は第五版より現る。
なお右に現れた三命題は第一版では次の形で現れている、――
『人口は生活資料なくしては増加し得ないということは、極めて明かな命題であって何らの例証をも必要としない。
『人口は生活資料がある場合には常に増加することは在来のあらゆる民族の歴史が十分にこれを証明するであろう。
『そして、優勢な人口増加力は罪悪または窮乏を生ぜずしては妨げられ得ず、人生という杯に盛られたこのたっぷりとした苦味とそれを生じたと思われる物理的原因の永続性とは、余りにも確実な証拠を有っている。』
[#ここで字下げ終わり]
これらの命題の第一はほとんど例証を必要としない。第二と第三とは、過去及び現在の社会状態における人口に対する直接的妨げを通観すれば、十分に確証されるであろう。
この通観が以下の諸章の主題である。
[#改丁]
第三章 人類社会の最低段階における人口に対する妨げについて(訳註)
[#ここから2字下げ]
〔訳註〕第二版以後の形における『人口論』の全四篇の中、その前半の二篇は、人口原理の存在とその作用とを過去及び現在の事実から実証しようとする部分であって、いわば歴史篇とも呼ばるべきものである。この歴史篇はしばしば第二版以後からはじめて現れたものの如く説かれているが、なるほどそれは第二版以後著しく増補されはしたけれども、決して第二版をまってはじめて現れたものでは決してなく、既に第一版にも明かに現れているところである。この歴史篇は、少くとも第一篇の関する限りでは、第二版以後は極めて僅少の附加が加えられているだけであるから、比較は主として第一版と第二版以後との差異に関して行われるべきである。そこで便宜上、第一篇の範囲に属する第一版の総括的記述のうち、人類の最低段階に関する記述をここに掲げることとし、第二段階に関しては第一版の記述は第二版以後では第六章に再現するから、これはそこにゆずり、その他個々の文に関しての比較は、各々関係の場所に訳註を附することとする。第一版における右に該当するものは次に如くである、――
第三章――『狩猟が主たる職業であり唯一の食物獲得法となっている人類の最も蒙昧な状態にあっては、生活資料は広大な地域に散在しているので、人口は必然的に比較的稀薄でなければならない。……
『しからば吾々は、以上の概観から、またはむしろ狩猟民族に関して参照し得る記述からして、次の如く推論し得ないであろうか、すなわち彼らの人口は食物が不足なために稀薄であり、もし食物がもっと豊富にあるならば、それは直ちに増加すべく、また蒙昧人では、罪悪を別とすれば、窮乏が、優勢なる人口増加力を圧縮しその結果を生活資料と等しくしておく妨げである、と。少数の地方的な一時的の例外を別とすれば、この妨げが現在不断にあらゆる蒙昧民族に対し働いていることは、実際の観察と経験とが吾々に物語るところであり、そして理論は、これは一千年の昔にも現在とほとんど同じ力で働きまた一千年後もほぼ同じほどであろうということを、指示しているのである。』
ただし第一版では狩猟状態に関する事実はアメリカ・インディアンのものが大部分を占めるのであり、右の引用も大体インディアンに関する総括をなすものである。
[#ここで字下げ終わり]
ティエラ・デル・フエゴの惨めな住民は、あまねく旅行家により、人類の最低水準にあるものとされている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き、「1」が底本では欠落]。しかしながら、彼らの家庭的習慣や行状を記したものはほと
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