_は十分に留意されて来ていない。そして、双方の側において物理的及び道徳的の諸原因が提出されたけれども、それからはいずれの側に有利な正しい推論も引出し得なかった。その現実の状態において一国が生産力と人口が大であればあるほど、それが生産物をそれ以上増加する力はおそらく小であり、従って、人口を、この静止的な、または緩慢に増加する、生産物の水準に、抑止するためには、それだけ余計の妨げが必然的に働かされねばならぬということは、双方の側の著者の注意を惹かなかったように思われる。従って、古代または現代の諸国民においてかかる妨げを発見してみたところで、これらのいずれかにおける絶対的な人口の多いことを否定すべき何らの推論もそれからは引出し得ないのである。この故に、古代人には知られなかった天然痘やその他の疾病の流行は、現代国民の人口の多いことを否定する論証と考えることは決して出来ないのである。もっともヒュウム1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]も、ウォレイス2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]も、これらの物理的原因を大いに重要視しているけれども。
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1)[#「1)」は縦中横] Essay xi. p. 425.
2)[#「2)」は縦中横] Dissertation, p. 80.
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彼らは、その提示せる道徳的原因においても、同様の誤謬に陥っている。ウォレイスは古代人の間における積極的結婚奨励をもって、古代世界の人口がより[#「より」に傍点]多かった主たる原因の一としている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし結婚を奨励する積極的法律が必要であるという事実は、人口が豊富であることよりむしろ人口の不足を表示するものである。そして、彼が特に言及しているスパルタの場合においては、前章で述べたアリストテレエスの章句から見れば、結婚を奨励する法律は著しい人民の不足を是正せんとする明白な目的をもって制定されたものであることがわかる。密集した過剰な人口を有つ国においては、立法者は、結婚と子供の増殖を奨励するために、明白な法律を制定しようとは、決して考えないであろう。ウォレイスの他の議論も、これを検討してみれば、これとほとんど同様に彼れの目的にとり役に立たぬことがわかるであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Dis
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