っとうまくやるには国を富ますことが先だという観念すら起さしめない。従っていかなる公共事業も政府に期待することが出来ず、そしていかなる個人資産家も、資本所有を意味する如き改良はあえてこれを行おうとはしないが、けだしこれはおそらく直ちに身の破滅の徴標となるであろうからである。かかる事情の下にあっては、吾々は、古代の事業がなおざりにされ、土壌がよく耕作されておらず、そして生活資料従ってまた人口が大いに減少しているのを見ても、少しも驚く気になれないのである。しかしナイルの氾濫によるデルタの自然的肥沃度は著しく高く、従って何らの資本が土地に投下されず、相続権がなく、従ってほとんど財産権がなくとも、それは、なお、その面積に比例して大きな人口を維持しているのであって、これは、もし財産が安固であり勤労がよく指導されるならば、徐々としてこの国の耕作を改良し拡張し、そしてそれを昔の栄華状態に戻すに足るものである。エジプトについて、その勤労を妨げたのが人口の不足であるわけではなく、その人口を妨げたのが勤労の不足である、と安んじて云い得るであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Id. vol. iii. c. xvii. p. 710.
2)[#「2)」は縦中横] Voyage de Volney, tom. i. c. iii. p. 33. 8vo.
3)[#「3)」は縦中横] Id. tom. i. c. xii. p. 170.[#「.」は底本では欠落]
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現在の縮小した生活資料の水準に人口を引き下げた直接の(訳註)原因は、余りにも明かである。農民は単に生きて行くだけの生活資料しか与えられない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。ドウラで作ったパン種も香料も使わない貧弱なパン、冷水、及び生ねぎが、彼らの食事の全部である。彼らの熱愛する肉や脂肪は、大きな催しの時か、または比較的暮しが楽のものの間でなければ、決して出て来ない。彼らの住居は土で造られた小屋であり、他国人なら熱と煙で窒息するであろうし、また不潔と栄養不良により発生する疾病がしばしば彼らをおそい、暴威を振うのである。かかる物理的害悪に加うるに、更に不断の危惧の状態、アラビア人の掠奪とマメリウクの来訪の恐怖、家族に伝わる復讐心、及び不断の内乱の一切の害悪があるのである2
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