、これを承認することは出来ない。かかる風土では、男よりも女の方がかなりに多くいるということは、極めてありそうなことである。女児よりも男児の方が多く生れることが確実にわかっているヨオロッパにおいてすら、女子の数は、一般に男子よりも多い。従って吾々は、暑い不健康な気候、野蛮な社会状態においては、男子の曝らされている事故の数は非常に多くなければならぬと想像し得よう。女子は、家庭に坐っていることが多いのであるから、炎熱や瘴気《しょうき》の苦しみを受けることが少ないであろう。彼らは一般に不節制から生ずる病気に罹ることは少ないであろう。しかしなかんずく彼らは戦争の惨害からは非常に免れることであろう。戦争の止むことのない社会状態においては、この原因による男子の死亡だけでも、両性の大きな不均衡を惹き起さずにはおかないが、殊にアビシニアのガラ族1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]について云われている如くに、あらゆる男子を誰彼の別なく殺戮し、結婚可能な女子だけをこの殺戮から救うという風習のある場合には、なかんずく甚だしいに違いない。これらの原因から生ずる両性の現実の不均衡がまず一夫多妻の認許を生ぜしめ、そしておそらく、吾々をしてより[#「より」に傍点]容易に、暑い風土における男女児の比率は温帯において吾々が経験しているものとは極めて異っていると信ぜしめることとなったのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. vol. iv. p. 411.
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 ブルウスは、この問題に関するそのいつもながらの偏見をもって、女子の一部のものの独身生活は一国の人口にとり致命的であると考えているように思われる。彼はジッダ族について云う、生活必要品がほとんどない場所に非常にたくさんの人民が集った結果として食料が大いに欠乏しているので、住民はほとんどマホメットにより与えられた特権を利用することは出来ない。従って彼らは一人以上の妻と結婚することが出来ない。そしてこの原因から、人民の不足と、多数の未婚女子とが生ずるのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、と。しかしこの不毛の地における人民の不足はもっぱら食料の不足から起るのであり、そして各人が四人の妻を有ったとしても、人口がそれにより永久に増加し得ないことは、明かである。
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 1)[
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