太平洋における他の島々に関しては、吾々はオウタハイトほど詳しい知識を有たない。しかし吾々の有っている知識だけによっても、その主な群島のすべてにおける社会状態が多くの点において著しく似ていることを、確信することが出来る。フレンドリ諸島及びサンドウィッチ諸島の土人の間には、オウタハイトと同じ封建制度と封建的紛乱が、同じ酋長の異常な権力と下層社会の窮情が、そしてまたほとんど同じ人民大部分の間の乱交が、広く存在していることが見出されているのである。
フレンドリ諸島においては、王の権力は無限であり、人民の生命財産は彼れの意のままであると云われているが、小主権者のような行動をする他の諸酋長が存在し、王のやり方を邪魔するので、王はしばしばこれを喞《かこ》っていた。『しかしいかに』(とキャプテン・クックは云う)『この有力者が王の専制的権力から独立しているとはいえ、吾々は、下層階級の人民が、各自その属する酋長の意のままになる外には、何らの財産も身体の安全も有たないということを証明するに足る事例を吾々は見たのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。』酋長はしばしば下層者を極めて無慈悲になぐりつける2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。そして彼らの誰かが船で窃盗を働いて捕えられた時には、その主人は彼らをとりなすどころかしばしば彼らを殺すようにすすめるのであるが3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]、このことは、酋長自身が窃盗罪を大して恐れていないように思われるのであるから、かかる貧民の生命はほとんどまたは全く価値がないものと彼らが考えるところからのみ起り得るものであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Cook's Third Voy. vol. i. p. 406.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 232.
3)[#「3)」は縦中横] Id. p. 233.
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キャプテン・クックは、最初にサンドウィッチ諸島を訪れた時には、外戦と内乱とが土人の間に非常に頻々とあると信ずべき理由をもった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてキャプテン・ヴァンクウヴァは、それより後の記録の中で、これらの諸島の多くがかかる原因により恐るべき荒廃を来したことを、力説している。キャプテン・クックの訪問以来、絶えざる争いがあって色々
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