驩ン物を生産するに必要な固定資本との比例が異るがために、貨幣は労賃の騰落による相対的変動を蒙るであろうからである。それはまたその生産に用いられる固定資本と、それと比較さるべき貨物の生産に用いられる固定資本との耐久力の程度が異るがために、――すなわち一方を市場に齎すに必要な時間がその変動を決定しようとする他の貨物を市場に齎すに必要な時間よりも、より[#「より」に傍点]長くまたはより[#「より」に傍点]短いがために、労賃の騰落という同一の原因によって変動を蒙るであろう。あらゆるかかる事情は、考え得られるいかなる貨物をも、完全に正確な価値の尺度たるの資格を喪失せしめるのである。
 例えばもし吾々が金を一標準と定めるとしても、それがあらゆる他の貨物と同一の事情の下で獲得され、従ってそれを生産するに労働と固定資本とを必要とする所の、一貨物たるに過ぎないことは、明かである。あらゆる他の貨物と同様に、労働の節約における改良はその生産に適用され、従って、その生産がいっそう増せるがためのみによって、それは他の物に対する相対価値において下落するであろう。
 もし吾々がこの変動原因が除去されそして同一の分量
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