黷ネいであろうことを、希望する。
 同じことが、セイ氏の優秀な著作に当てはめ得ようが、彼は啻《ただ》に、大陸の諸学者中で、スミスの諸原理を正当に評価しかつこれを適用した最初の人、または最初の人々の一人であり、かつその啓蒙的にして有益な体系の諸原理を、ヨオロッパ諸国民に推奨するに、他の大陸の諸学者を全部合せたよりもなす所多かったのみならず、更にまたこの学問をより[#「より」に傍点]論理的なかつより[#「より」に傍点]教導的な順序に置くことに成功し、そして、独創的な正確なかつ深遠な二三の討論によって、斯学を富ましめたのである(註)。しかしながら、著者がこの紳士の著作に対して懐く尊敬は、著者が学問の利益のために必要であると考える自由をもって、著者自身の見解と異る所の『経済学』中の諸章句に対し批評を加えることを妨げなかったのである。
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(註)第十五章、第一部、『市場論』は、特に、この優れた学者によってはじめて説明されたものと信ずる所の、二三の極めて重要な諸原理を含んでいる。
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      第三版に対する原著者の注意

 本版においては、私は前版におけるよりも、価値[#「価値」に傍点]に関する困難な題目についての私の所見を、いっそう十分に説明せんと努力し、そしてその目的のために、第一章に二三の附加をなした。私はまた、機械[#「機械」に傍点]の問題につき、またその改良が国家の各種の階級の利害に及ぼす諸結果についての、新しい一章を挿入した。価値と富との特性[#「価値と富との特性」に傍点]に関する章においては、私はこの重大な問題に関するセイ氏の学説――その著書の最終第四版において修正されたもの――を検討した。最終の章において私は、その農法の改良により、国内においてその穀物を生産するに必要な労働量が減少するか、または、その製造貨物の輸出により、外国からより[#「より」に傍点]低廉な価格でその穀物の一部分を取得するかの結果として、たとえその貨物総量の全貨幣価値は下落するとしても、一国は附加的貨幣租税を支払う能力があるという学説をいっそう有力なる見地からして、打ち立てようと努力した。この考察は極めて重要であるが、それはけだしこの考察は、特に、莫大な国債の結果たる、重い固定貨幣租税を負担している国において、外国穀物の輸入を無制限のままに放置する政策の問題に、関係するからである。私は、租税支払能力は、大量の貨物の総貨幣価値にも、また資本家及び地主の収入の総貨幣価値にも、依存するものではなくして、各人が通常消費する貨物の貨幣価値と比較しての彼れの収入の貨幣価値に依存するものであることを、示さんと努めたのである。
     一八二一年三月二十六日
[#改ページ]

        目次

 訳序
 原著者序言
 第三版に対する原著者の注意
第一章 価値について
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第一節
(一)価値なる語の曖昧さ。使用上の価値と交換上の価値
(二)価値を有する物品における効用の必然的存在
(三)分量上の価値の原因。稀少性従って大抵の場合において労働
(四)稀少性
(五)(六)生産費及び交換価値の根拠としての労働。このことはスミスによって裏書きさる
(七)しかしながら彼は後に、穀物及びそれ自身交換される物品たる労働その他の価値標準を樹立している
(八)穀物に関しての誤謬。それはそれ自身多くの原因よりして可変的である
(九)労働もまた可変的である
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(一〇)それに関するスミスの誤謬
(一一)このことを更に例証す
(一二)あらゆる物の真実価値は、その生産に、または労働それ自身の場合にはその維持に、必要な労働量によって評価さるべきである
第二節
(一三)労働は疑いもなく種類を異にするけれども、かかる種類の相違はまもなく調整され引続き永久的なものとなるから、前掲の法則は覆《くつが》えされない
第三節
(一四)更にすべての企業においては資本が必要であり、従って貨物に直接に適用される労働がその価値に影響を及ぼすのみならず、更に最終工程を便ならしめるための為めの器具を準備するために用いられる労働もまた然《し》かする
(一五)このことは、貨物はその生産に投ぜられた各々の労働量によって交換されるという法則に、影響を及ぼさない。労働とは直接的なものと間接的なものとであると考えなければならない
(一六)このことは、不変的価値標準があるならばそれによって証明されるであろう
第四節
(一七)貨物はその生産に費された各々の労働量によって交換されるという法則は、次によって修正される
(一八)イ、かかる労働が直接でありまたは間接であ
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