ノ百名の人間の助力によって、彼れの機械を綿製品の製造に使用し、他方農業者は引続き以前と同様に百名の人間を穀物の耕作に雇っていると仮定せよ。第二年目中に、彼らはすべて同一の分量の労働を使用するであろう。しかし、毛織物業者並びにまた綿織物業者の有する財貨と機械との合計は、二百名の人間を一年間使用した労働の結果であり、またはむしろ百名の人々の二年間の労働の結果であろう。しかるに穀物は百名の人間の一年間の労働によって生産されるであろう、従ってもし穀物が五〇〇|磅《ポンド》の価値であるとすれば、毛織物業者の機械と毛織布との合計は一、〇〇〇|磅《ポンド》の価値でなければならず、そして綿織物業者の機械と綿製品もまた、穀物の価値の二倍でなければならない。しかしながらこれらのものは穀物の価値の二倍以上であろう、何故なれば、第一年目の毛織物業者及び綿織物業者の資本に対する利潤がその資本に附加されているが、しかるに農業者の利潤は費消されかつ享楽されてしまっているからである。かくして彼らの資本の耐久力の程度の異るがために、または同じことであるが、一群の貨物が市場に齎され得るまでに経過すべき時間のために、それらの価値は、正確にそれに投ぜられた労働の分量に比例しないであろう――すなわちそれらは二対一ではなく、最も価値の多いものが市場に齎され得るまでに経過しなければならぬより[#「より」に傍点]長い時間を償うために、幾らかそれより[#「より」に傍点]もより多くなるであろう。
 各労働者の労働に対し一年に五〇|磅《ポンド》が支払われ、または五、〇〇〇|磅《ポンド》の資本が使用され、そして利潤は一〇%であるとすれば、機械の各々並びに穀物の価値は、第一年目の終りに、五、五〇〇|磅《ポンド》であろう。第二年目には、製造業者及び農業者は再び各々労働を支持するために五、〇〇〇|磅《ポンド》を用い、従って再び彼らの財貨を五、五〇〇|磅《ポンド》で売るであろうが、しかし機械を用いる者は、農業者と均衡を保つためには、啻に労働に使用された五、〇〇〇|磅《ポンド》なる同額の資本に対して五、五〇〇|磅《ポンド》を得なければならぬばかりでなく、更に機械に投ぜられた五、五〇〇|磅《ポンド》に対する利潤として、より[#「より」に傍点]以上に五五〇|磅《ポンド》の額を得なければならず、従って彼らの財貨は六、〇五〇|磅《ポンド》で売れなければならない。しからばここに、年々彼らの貨物の生産に正確に同一の分量の労働を使用する資本家達があるが、しかも彼らの生産する財貨の価値は、その各々によって用いられる固定資本すなわち蓄積労働の分量の異るために、異っているのである。毛織布と綿製品との価値は同一であるが、それはこれらが同一の分量の労働と同一の分量の固定資本との生産物であるからである。しかし穀物の価値はこれらの貨物と同一ではないが、それは固定資本に関する限りにおいて、異る事情の下で生産されるからである。
 しかし、それらの相対価値は、いかにして労働の価値における騰貴によって影響を蒙るであろうか? 毛織布及び綿製品の相対価値が何らの変化をも蒙らないであろうことは明かである、けだし仮定された事情の下においては、一方に影響を及ぼすものは他方にも等しく影響を及ぼさなければならぬからである。小麦及び大麦の相対価値もまた何らの変化も蒙らないであろう、けだしそれらは、固定資本及び流動資本の関係する限りにおいて同一の事情の下で生産されるからである。しかし毛織布または綿製品に対するその相対価値は、労働の騰貴によって変更されなければならない。
 利潤の下落なくしては、労働の価値における騰貴はあり得ない。もし穀物が農業者と労働者との間に分たるべきであるとするならば、後者に与えられる割合が大きければ大きいほど、前者に残る所はわずかであろう。同様に、もし毛織布または綿製品が労働者とその雇傭者との間に分たれるとするならば、前者に与えられる比例が大きければ大きいほど、後者に残る所はわずかである。そこで労賃の騰貴により利潤が一〇%から九%に下落すると仮定すれば、製造業者は、その固定資本に対する利潤として、その財貨の共通の価格に(すなわち五、五〇〇|磅《ポンド》に)五五|磅《ポンド》を附加せずに、その額に九%すなわち四九五|磅《ポンド》しか附加せず、従って価格は六、〇五〇|磅《ポンド》ではなくて五、九九五|磅《ポンド》となるであろう。穀物は引続き五、五〇〇|磅《ポンド》で売れるであろうから、より[#「より」に傍点]以上の固定資本が使用された製造財貨は、穀物またはその他のより[#「より」に傍点]少い分量の固定資本が入込んでいる財貨に比較して、下落するであろう。労働の騰落による財貨の相対価値の変動の程度は、固定資本が使用された全資本に対
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