フうち結婚まで生存するものの真の比率を得んがためには、今年の結婚を十年後の死亡と比較しなければならぬ。ここに述べた如き人口増加をもってすれば、十年間の死亡の増加は〇・三やや強となり、従ってその結果は、三五一のうち二〇〇、すなわち三五のうち約二〇――二七のうち二〇ではなく――が結婚まで生存することになろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。前に設けた法則に従って、結婚を四年後の出生に比較すれば、この場合結婚の出産性は五・五八ということになる。産児の半数が生存する年齢に関するバアトン氏の計算はおそらくアメリカ一般には適用し得ないであろう。この計算の基礎となっている記録簿はフィラデルフィア及び一、二の小都市や村落からとったものであり、これらはヨオロッパの中都市ほど健康に適するとは思われず、従ってこの国一般の基準とはなり得ないものである。
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1)[#「1)」は縦中横] もしバアトン氏が述べている比率が正しいとすれば、アメリカにおける平均寿命はロシアにおけるよりも著しく短いということになるば、さればこそ私は、結婚年齢と死亡年齢との差を、ロシアの如くに十五年とせずにわずか十年としたのである。人口の増加しつつある国における平均寿命を測定する、プライス博士の方法によれば(vol. i. p. 272.)、ロシアにおけるこの平均寿命は約三八であり(出生二六分の一、死亡五〇分の一、中項三八分の一)、結婚年齢を二三歳とすれば、その差は一五年[#「一五年」は底本では「一〇年」]である。
アメリカでは平均寿命は同一の原理によればわずかに三二・二分の一であり(出生二〇分の一、死亡四五分の一、中項三二・五分の一)、結婚年齢を二二歳半とすれば、その差は一〇年である。
右を書いて後に、サン生命保険協会の保険技師ミルン氏の計算を見て、プライス博士の、人口が増加しつつある国における平均寿命の測定法は決して正しくなく、そしてかかる国における真の平均寿命は、年死亡率と年出生率の中項よりも年死亡率に遥かに近いと信ずべき、理由がわかった。しかし私は本章の計算においては中位比率を残しておくことにするが、それはけだし、この中項の方が、平均寿命の長さよりも、死亡が現在の出生と等しくなる時期、または現在の結婚と一致する時期を、よく表わすと思うからである。年出生が著しく年死亡を超過する進歩的な国においては、年死亡が現在年出生と等しくなる時期は、平均寿命よりも短い。(訳註――この最後のパラグラフのみは第六版のみに現わる。)
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英蘭《イングランド》においては、結婚の出生に対する平均比率は、近年は約一〇〇対三五〇と思われる。『英蘭《イングランド》における人口に対する妨げについて』と題する章において、私は出生及び死亡の脱漏はほぼ六分の一と推測したが、これを七分の一と見て、これを出生に加算すれば、私生児の事情も酌量されたことになろう。そうすると結婚は出生に対して四、死亡に対して三ということになる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。再婚及び三婚についての修正を行うと、結婚の死亡に対する比率は一対三・六となる。英蘭《イングランド》における結婚年齢は平均死亡年齢より約七年若いと仮定すれば、この七年間の増加は、年に一二〇分の一という現在の人口増加率によれば、〇・〇六となり、そして結婚まで生存する比率は、三八一のうち二〇〇、すなわちやや半数以上となる2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。結婚を四年後の出生と比較すれば、結婚の出産性として四・一三六が得られる。
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1)[#「1)」は縦中横] これは一八〇〇年以前の人口の状態に当てはまる。(訳註――この註は第五版より現わる。)
2)[#「2)」は縦中横] 出生三〇分の一、死亡四〇分の一、中項三五分の一。結婚年齢を二八歳と仮定すれば、その差は七年となる。(訳註――第三―五版ではこれに直ちに続いて次の如くあったが、第六版で削除された。『出生及び死亡の脱漏についてこの場所及び前の章で行った斟酌については、私は準拠すべき極めて確実満足な根拠は何もなかったのであるから、これは不正確であるかもしれず、またおそらく過大であろう、もっともかかる斟酌を行っても、国情を考えると死亡率は異常に低いように思われるが。しかしながら、増加率を異にする国では、年死亡はその比較上の健康状態の非常に不正確な基準であることを、注意しなければならない。人口増加が進行中の場合には、人口のうち毎年死滅する部分は、今述べたロシアやアメリカの場合で非常に明瞭にわかったように、平均寿命とは極めて異るものである。そして英蘭《イングランド》の人口増加は近年はフランスよりも急速なのであるから、この事情は疑いもなく、年死亡
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