るまでこのようにして行われるのである。
 士官は一般にこの改正に不賛成である。彼らは、ノルウェイの青年は、二十歳では、体力も十分に発達せず、立派な兵士となることは出来ない、と云っている。そして多くの人は、農民は今や早婚に奔《はし》り過ぎ、またこの国が養い得る以上の子供が生れるであろう、と云っている。
 しかし、兵役編入に関するあらゆる規定を別としても、ノルウェイの特殊事情は、早婚に対する非常に強い障害をなすものである。国内の過剰人口を吸収すべき大工業都市はなく、また各村落も当然に自ら需要以上の人手を供給するから、仕事を求めて場所をかえてみても滅多に成功しそうもない。従って外国移民の機会がない限り、ノルウェイの農民は一般に生れた村に留っている。そして、死亡率が低いので家屋と職業のあきはなかなかに出来ないから、農民はしばしば、家族を養い得る地位を獲得し得るまでには、長期間待つのを余儀なくされるであろう。
 一般にノルウェイの農場には、その大きさに比例して一定の数の既婚労働者が用いられており、それは家人《ハウスマン》と呼ばれている。彼らは農業者から、家屋と、ほぼ一家を支えるに足る土地を受け、これに対して、何時《なんどき》なりとも要求された場合に安い一定の価格で働らく義務を負うている。都市のすぐ近くと海岸地方とを除けば、この種の地位の空くのが、家族を養う唯一の機会である。人口が少なく、仕事の種類が少ないので、この問題は誰の眼にもはっきりとわかる。従って彼は、かかる空席が生ずるまでは、結婚の志向を抑えるの絶対に必要なることを感ぜざるを得ない。材料が十分にあるので自分の家を建てたいと思っても、農業者が既に十分な労働者を持っている場合には、農業者がそれに適当な土地を与えようとは期待し得ない。そして彼は夏の三、四箇月の間は一般に仕事を見出すことが出来ようが、丸一年間家族を養うほどの稼ぎをする機会はほとんどなかろう。おそらく教区牧師が結婚拒絶権を行使したのは、彼らが待ち切れないで自ら家を建て、または建てようと企て、そして彼らの稼ぎを当てにするという場合であろう。
 従って、若い男女は、家人《ハウスマン》の地位が空くまでは、未婚の使用人として農業者の許に止まらざるを得ない。しかもこれら未婚の使用人は、あらゆる農場やあらゆる紳士の家庭で仕事に必要なよりも遥かに大きな比例をなしている。ノル
前へ 次へ
全217ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング