q供を二人以上も産んで自分の足かせになるようにはしないというのが、公理となっている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。双生児が生れると、母が二人を育てることは出来ないので、その一人は普通棄てられる。そして子供に授乳中に母が死ぬ時には、子供はその命を保つ望みはなく、そしてニュウ・オランダにおける如くに、それは母と同じ墓に埋められる3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Charlevoix, N. Fr. tom. iii. p. 304.
2)[#「2)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 107. Lettres Edif. tom. ix. p. 140.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 107. Lettres Edif. tom. viii. p. 86.
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親自身がしばしば欠乏に曝されるのであるから、その子供を養うの困難は時に極めて大となり、ために彼らは子供を棄てたり殺したりするの止むなきに至る1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。不具の子供が棄てられるのは非常に一般的である。そして南アフリカの種族のあるものでは、その労働に能く堪えない母の子供は、親の弱点を遺伝するかもしれぬという恐れから、同じ運命を分つのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 108.
2)[#「2)」は縦中横] Lafitau, Moeurs des Sauv. tom. i. p. 592.
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アメリカ土人の間に不具者が著しく少ないことの原因を、吾々はこの種の原因に帰しなければならぬ。たとえ母がその子供達を区別なしに育てようと努めたとしても、全体のうちある比例のものは、蒙昧生活の運命たる峻烈な試練の下に死んでしまうのであり、その結果としておそらく、本来の虚弱や欠陥をもちながら働くものは、何人も成年になるまで生きることは出来ないのである。もし彼らが生れるや否や殺されないとしても、彼らを待つ苛酷な試練があるのであるから、久しくその命を保つことは出来ない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。インディアンがこれほど苦しい労働生活をせず、そして子供を殺すことを妨げられている、スペイン領地方では、彼らの数多くは不具者で、小人で、手を欠いており、盲目で、聾である2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Charlevoix, tom. iii. p. 303. Raynal, Hist. des, Indes tom. viii. l. xv. p. 22.
2)[#「2)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 73. Voyage d'Ulloa, tom. i. p. 232.
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一夫多妻はアメリカ土人の間では一般に許されていたようであるが、しかしこの特権は、カシイク及び酋長、または生活資料がもっと容易に得られる南方の肥沃なある地方でその他のものが時々用いる外は、滅多に用いられたことはない。一家を養う困難は人民大衆をして一人の妻に満足せしめたが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、しかもこの困難は一般に知られかつ認められているので、父親は娘を嫁にやることを承諾する前に、求婚者に、狩猟の熟練、従って妻子を養う能力について、明確な証拠を要求したのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。女は早く結婚しないと云われている3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。そしてこれは、宣教師やその他の著者が再三留意している結婚前の彼らの不品行によって、確かめられるようである4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 102. Lettres Edif. tom. viii. p. 87.
2)[#「2)」は縦中横] Lettres Edif. tom. ix. p. 364. Robertson, b. iv. p. 115.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 107.
4)[#「4)」は縦中横] Lettres Edif. passim. Voyage d'Ulloa, tom. i. p. 343. Burke's America, vol. i. p. 187. Charlevoix, tom. iii. p. 303, 304.
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右に挙げた習慣は、主として家族の扶養に伴う困難から生じたものと思われるが、これは、その親が彼らを救おうとする最上の努力にもかかわらず蒙昧生活の困難の下において必然的に多数の子供が死ななければならぬということ1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]と相俟って、疑いもなく、新しく生れて来るものを力強く圧迫しなければならぬのである。
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1)[#「1)」は縦中横] クリュウクシュウスは、ほとんど三十人に一人も成年に達しない、と云っている(Hist. Canad. p. 57.)が、これは確かに大きな誇張に違いない。
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若い蒙昧人がその少年期の危険を無事に通った時には、これに劣らぬ恐るべき他の危険が成年になろうとする彼を待ち構えている。蒙昧状態においてかかる疾病は、数は文明社会よりも少いが、その激しさと、致命的なことでは、文明社会にある疾病よりももっと甚しい。蒙昧人は不思議なほど不慎慮であり、そして彼らの生活資料は常に不安なものであるから、彼らは、獲物の多寡、または季節の生産物の多少によって、しばしば極端な欠乏から法外な豊富へと移行する1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。一方の場合における彼らの無思慮な大食と、他方の場合におけるその極端な節食は、人類の体躯に等しく有害である。従って彼らの気力はある季節には欠乏によってそこなわれ、また他の季節には過食と消化不良による疾病によってそこなわれる2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。これは彼らの生活様式の不可避的結果と考えられようが、これによって多くの者は働き盛りに死んでしまう。彼らは同様に、極度に肺病や肪膜や喘息や麻痺性の病気にかかるが、これは彼らが狩猟や戦争に当って蒙る甚しい困苦と疲労、及び彼らが絶えず曝されている険悪な気候によって、もたらされるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 85.
2)[#「2)」は縦中横] Charlevoix, tom. iii. p. 302, 303.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 86. Charlevoix, tom. iii. p. 364. Lafitau, tom. ii. p. 361.
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宣教師は、南アフリカのインディアンについて、彼らが治療法を知らない病気に絶えずかかると云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。最も簡単な薬草を用いることも、またはその粗雑な食事を変えてみることも知らず、彼らは数多くこれらの病気で死んでしまう。ジェスイット僧のフォークは、彼が旅行した各地ではどこでも老人はただの一人も見なかったと云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。ロバトスンは、蒙昧人の寿命は、よく整った勤勉な社会におけるよりも短いと断定している3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。レイナルは、蒙昧生活をしばしば擁護しているにもかかわらず、カナダのインディアンについて、もっと整った安穏な生活方法をしている吾々国民ほど長生きするものはほとんど無いと云っている4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。そしてクックとペルウズは、アメリカの西北海岸の住民のあるものについて述べているところで、これらの意見を確認しているのである5)[#「5)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 83.
2)[#「2)」は縦中横] Id. tom. vii. p. 317, et seq.
3)[#「3)」は縦中横] Id. b. iv. p. 86.
4)[#「4)」は縦中横] Raynal, b. xv. p. 23.
5)[#「5)」は縦中横] 〔Cook's Third Voy. vol. iii. ch. ii. p. 520. Voy. de Pe'rouse, ch. ix.〕
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南アメリカの大平原においては、広い沼や雨期に続く洪水に焼けつくように照りつける太陽は、時に恐るべき流行病を惹き起す。宣教師は、インディアンの間にしばしば伝染病が起り、そして時々その部落に大きな死亡率を生ずると云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。天然痘は至る処に猖獗を極めるが、それは注意が足りずまた住居が狭いので、これに罹った者は、ほとんど全く恢復しないからである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。パラグアイのインディアンは、ジェスイット僧が世話や注意を払っているにもかかわらず、非常に伝染病に罹ると云われている。天然痘と悪性熱病は、それがもたらす惨害からして、悪疫と呼ばれているが、これはしばしば盛んな伝道を駄目にしてしまうのであり、そしてウロアによれば、伝道が始まって以来の時間と彼らの非常に平和な生活とに比例してそれがその勢を増さないのは、この原因によるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 79, 339; tom. ix. p. 125.
2)[#「2)」は縦中横] Voyage d'Ulloa, tom. i. p. 349.
3)[#「3)」は縦中横] Id. tom. i. p. 549.
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かかる流行病は啻に南方のみに限られるものではない。それはもっと北の民族にも稀しくないかの如き記述が行われている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてキャプテン・ヴァンクウヴァは、アメリカ西北方海岸の、最近の航海記において、明かにこの種のある疾病から起った極めて異常な荒廃を、報告している。ニュウ・ダンジェネスから海岸を百五十|哩《マイル》彼は通過したが、前と同じ数の住民を見たことは一度もなかった。人影のない部落がしばしばあったが、それはいずれも、以前にこの地方に散らばっていた蒙昧人を全部収容するに足るほど大きかった。彼が行った色々の地方で、特にポオト・ディスカヴァリ附近では、人間の頭蓋骨、肋骨、脊髄骨、その他種々の人体の遺物が滅茶苦茶にたくさん散乱していた。そして生き残ったインディアンの身体には戦の傷痕は何もなく、また恐怖や不安の特別な徴候は何も認められなかったのであるから、この人口減少は流行病により生じたに違いないと考えるのが最も当然である2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。天然痘はこの海岸地方におけるインディアンでは普通であり、致命的なものであるように見える。その消し難いあばたは多くの者に見られ、また若干はそれにより一眼の視力を失っていたのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vi. p. 335.
2)[#「2)」は縦中横] Vancouver's Voy. vol. i. b. ii. c. v. p.
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