いて行けるようになる前に、もう一人子供が出来れば、世話が行届かずに二人の中一人はほとんど必然的に死ななければならない。このような放浪的な苦労の多い生活では、たった一人の子供でさえこれを育てることは非常に厄介な苦しい仕事に相違ないのであるから、母たるの強い感情に刺戟されないくらいの女でそれを引受けるもののあり得ないのは、驚くに当らぬことである。
 生れて来る人間を力ずくで抑圧するこれらの原因の外に、なお結果においてこれを殺すに寄与する原因を挙げなければならぬ。すなわちこれら蒙昧人の他の種族との頻々《ひんぴん》たる戦争と相互間の不断の闘争、深夜の殺人を促がししばしば無辜《むこ》の流血を惹き起す不思議な復讐心、醜悪な皮膚病を発生させるような彼らのみじめな住居の煤や汚物、及びあわれな生活様式、なかんずく多数の人間を一掃する天然痘の如き恐るべき伝染病がこれである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] See generally, the Appendix to Collins's Account of the English Colony 
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