Rはおそらく十分に説明し得るであろう。疑いもなく、彼らをして、古代のゲルマン民族の如くに、戦に敗れて半ば破滅した軍隊をかくも驚くべく恢復し、未来の歴史家を驚かし得せしめたものは、かかる急速な人口の供給であったのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Dissertation, p. 62. 8vo. 1763, Edinburgh.
2)[#「2)」は縦中横] Lib. vi. c. xii.
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しかも、殺児の慣行が、ギリシアにおけると同様に、最も早い時代からイタリアに広く行われていたと信すべき理由がある。ロムルスのある法律は、三歳末満の小児遺棄を禁止しているが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、これは、生れてすぐ遺棄する習慣が以前には広く行われていたことを意味するものである。しかしこの慣行は、云うまでもなく、戦争による人口の減少が新たに生れて来る世代に対し、余地を作るに足らなかった場合の外は、決して行われなかったであろう。従ってそれは全幅の増加力に対する積極的妨げの一つと考えられ得ようが、しかし現実の事態においては、それは確かに、人口を阻止するよりはむしろ促進するにあずかって力あるものであった。
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1)[#「1)」は縦中横] Dionysius Halicarn. lib. ii. 15.
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ロウマ人自身の間においては、その共和国の当初から最後まで不断の戦争に従事しており、その多くは恐るべきほどに破壊的であったので、この原因による人口に対する積極的妨げは、それだけで驚くべきほど大なるものであったに相違ない。しかしこの原因だけでは、いかにそれが大であったにしろ、もし他にもっと有力な人口減少の原因が起らなかったならば、アウグスツス帝やトラヤヌス帝を促して、結婚と出産を奨励する法律を発布せしめるに至った如き、帝政治下のロウマ市民の不足を、生ぜしめることは決してなかったであろう。
従来ロウマの領内に普及していた財産の平等が次第に破壊され、土地が少数の大地主の手中に帰した時、この変化によって相次いでその生活資料を奪われた市民は、当然に、近代国家における如くに、その労働を富者に売る以外には、餓死を免れるべき方法がなかったであろう。しかし奴隷の数が莫大に上り、ロウマの奢侈の増大に伴い不断に流入してその数を増し、遂に農工業の一切の職業を占めてしまったので、市民は労働を売るという方法に出る路を全く遮断されていた。かかる事情の下においては、自由市民の数が減少したということは少しも驚くべきことではなく、むしろ大地主の外に自由市民が少しでも存在したことに驚嘆すべきであろう。そして事実上、多くのものは、奇妙な途方もない慣習、すなわち貧乏な町民に無償で多量の穀物を分配するという、この都市の奇妙な不自然な状態がおそらく要求したところの慣習がなかったならば、存在し得なかったであろう。アウグスツス時代に二十万人がこの分配を受けた。そしておそらく彼らの大部分は他に頼るべき物をほとんどもたなかったのである。それはあらゆる成年者に与えられたものと想像されるが、しかしその分量は一家族には足りず、一個人には多過ぎた1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。従ってそれは彼らをして増加し得せしめることは出来なかった。そして貧民の間の小児遺棄の習慣についてプルタアクが述べている様子から見ると2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、三児法[#「三児法」に傍点]があるにもかかわらず、多くのものが殺されたと信すべき十分な理由がある。タキトスはゲルマン民族を論じながらロウマにおけるこの習慣に言及しているが、この章句は同一の結論に導くように思われる3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。慈善の外には生活資料を獲得する一切の方法を全く奪われてしまい、ために自分自身を養うことがほとんど出来ず、いわんや一人の妻と二、三人の子供を養うことは思いもよらぬ一群の人々の間に、かかる法律は実際いかなる効果を有つことが出来たであろうか。もし奴隷の半数が国外に送り出され、そしてこの人民が農業や製造業に用いられたならば、その結果として、出産を奨励するための一万の法律を作った場合よりも確実に急速に、ロウマの市民の数は増加したことであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Hume Essay xi. p. 488.
2)[#「2)」は縦中横] De Amore Prolis.
3)[#「3)」は縦中横] De Moribus Germanorum, 19. 結婚と子供の出生を奨励する法律がいかに完全に蔑視されたかは Minucius Felix in Octavio, cap
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