。] Id. p. 187.
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この研究の中で挙げてある最後の飢饉の原因で、著者が大いに重大視しているものは、酒を造るために穀物が非常に多く消費されるという事実である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし彼がこれを飢饉の原因として述べているのは、明かに非常に大きな誤りである。しかもグロジエ僧正の支那に関する一般的記述の中でも同じ誤りが再び現れており、そして上記の原因がこの飢饉という害悪の大源泉の一つと考えられている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。しかし実際は、この原因の一切の傾向は、これと正反対である。穀物を必要な食物として用いる以外の何らかの用途に消費することは、人口が生活資料の極限に達するに先だってこれを妨げることとなる。そして飢饉の際には穀物はこの特殊の用途から引去られ得るのであるから、かくして開かれる公共の穀倉は、他のいかなる方法によって作られるよりもより[#「より」に傍点]豊富なものとなる。かかる消費がひとたび確立され、永久的になる時には、その結果は、あたかも土地の一部分がその上に住む人間全部と共に、この国から取り除かれたと、全く同一である。残余の人々は、平年作の年には、以前と全く同一の状態にあり、より[#「より」に傍点]良くもより[#「より」に傍点]悪くもならないであろうが、しかし飢饉の時には、この土地の生産物は、彼らがそれを食うのを助力する人の消費は少しもなしに、彼らに返されるのである。支那は、醸造所がなければ、確かに現在より人口が多いであろう。しかし不作に際しては、資源は現在よりも更に少いことであろう。そして同じ大きさの原因が作用する限り、右の結果として、より[#「より」に傍点]多く飢饉の厄を蒙り、かつその飢饉はより[#「より」に傍点]苛酷なものとなるであろう。
[#ここから2字下げ]
1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 184.
2)[#「2)」は縦中横] Vol i. b. iv. c. iii. p. 396. 8vo. Eng. tran.
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日本の状態は多くの点において支那の状態に似ているから、従ってこれを詳論することは過度の反覆になってしまうであろう。モンテスキウは、この国の人口稠密なことを、女の出生がより[#「より」に傍点]大であることに帰している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかしこの人口稠密の主たる原因は、疑いもなく、支那の場合と同様に、住民の倦むことなき勤勉が今日まで常に主として農業に向けられて来たことにある。
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1)[#「1)」は縦中横] Liv. xxiii. c. xii. 時に人口問題を理解しているように思われるモンテスキウが、また時にはこのようなことを云うのは、驚くべきことである。
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トゥンベルクの日本に関する記述の序言を読むと、その住民がかくも幸福に豊かに暮していると称せられる国の人口に対する妨げを辿るのは、極度に困難に思われるであろう。しかし彼自身の著書の後の方を読んでみると、序言から得られる印象と矛盾して来る。またケンプフェルの貴重な日本史においては、これらの妨げは十分に明瞭である。彼が載せている、日本で著わされた二つの年代史の抜萃には1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、この記録の始まって以来起った種々なる死亡や疫病や飢饉や流血戦争やその他の破壊原因に関して、極めて興味ある記述が与えられている。日本人が支那人と違うところは、それが遥かにより[#「より」に傍点]好戦的、擾乱的、放縦、かつ野心的なことにある。そしてケンプフェルの記述からすれば、支那における殺児による人口に対する妨げと対応するものは、日本では性に関する行状がより[#「より」に傍点]放縦であり、戦争や内乱がより[#「より」に傍点]多数である事実であることがわかるであろう。疾病及び飢饉による人口に対する積極的妨げに関しては、両国はほとんど同等の水準にあるように思われる。
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1)[#「1)」は縦中横] Book ii.
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第十三章 ギリシア人における人口に対する妨げについて
その歴史の初期におけるギリシア人及びロウマ人の間におけるより[#「より」に傍点]平等な財産の分割、及び彼らの勤労が主として農業に向けられていた事実が、大いに人口を奨励する傾向があったに違いないことは、一般に認められているところであり、また実際疑問の余地がないであろう。農業は、啻にヒュウムの云う如くに1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、大衆の生存にとり主として必要な種類の産業であるのみならず、また事実上それは、大衆がそれにより生存し得る
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