曹謔閧焉Aその生活資料に比例して人口稠密な国たらしめているのである。
 支那人は結婚に二つの目的を認めている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。第一は先祖の祭りを絶やさないということであり、第二は種の増殖である。デュアルドは、両親に対する子供の尊敬と服従とはその政治の大原則であるが、これは死後にまでも続くものであり、この義務はあたかも生ける人に対する如くに行われる、と云っている。かかる原理の結果として、父親は、その子供を全部結婚させてしまわないと、一種の不名誉を感じ心安からず思うのである。そして兄は、父から何も相続しなくとも、弟妹を養いこれを結婚させなければならぬのであるが、これは、もって家が廃絶し祖先がその子孫から当然受くべき尊敬と奉仕を受け得なくなるのを、避けんがためである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. et Curieuses, tom. xxiii. p. 448.
 2)[#「2)」は縦中横] Duhalde's China, vol. i. p. 303.
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 サア・ジョオジ・スタウントンは、何事であれ強力に推奨され一般に実行されるものは、遂には一種の宗教的義務として考えられるに至るものであり、従って支那では、将来の家族を養う見込みが少しでもありさえすれば、結婚はかかる宗教的義務として常に行われる、と述べている。しかしながら、この見込みは常に必ずしも実現されず、その場合には、子供はそのあわれな両親に遺棄される1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし両親が子供をかくの如く遺棄することを許されるという事実ですらが、疑いもなく、結婚を容易にし人口増加を奨励する傾向をもつこととなるのである。すなわちこの最後の手段が前もって考慮に入っているから、結婚することはそれほど恐れられていないし、そして親たるの感情が働くので、常に、最もひどい必要に迫られた場合を除き、かかる手段は避けることとなるであろう。その上、子供達特に息子達はその両親を養う義務があるのであるから2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、貧乏人にとっては結婚は慎慮に発する手段なのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] Embassy to China, vol. ii. p. 157.
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 157.
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 結婚に対するかかる奨励の結果として、富者の間では、財産が分割されることとなるが、これはそれ自身として人口を増殖させる有力な傾向を有っている。支那においては、人々の地位の不平等よりも財産の不平等の方が少い。代々の父親がその息子達に平等に財産を分って遺贈するので、土地所有の分割は極めて適度である。死んだ両親の全財産をただ一人の息子が相続するようなことは、ほとんど全くない。そして早婚が一般に行われているので、この財産が傍系相続により増加するということは余りない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。これらの原因は絶えず富を均等化する傾向をもつ。従って、自分自身それを増加するために少しも努力しなくてもよいほどの富の蓄積を相続するものはほとんどない。支那人の間では、三代以上も同じ家で大きな財産が続くことは滅多にない、とよく云われている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 151.
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 152.
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 結婚の奨励が貧民に対し及ぼす結果は、労働の報酬を能う限り低くしておき、従って彼らを極度の赤貧状態に圧迫抑止するということ、これである。サア・ジョオジ・スタウントンは、労働の価格は一般に、食料品の価格に対し、どこにおいても、普通人が耐え得る最小限度であり、そして、食堂の兵士の如くに大家族をなして一緒に暮すことから利益を得、またかかる食堂が[#「が」は底本では「か」]経営に最大の節約を実行しているにもかかわらず、彼らは植物性食物をとるだけで、何らかの動物性食物は極めて稀れでありかつ少量である、と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 156.
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 デュアルドは、支那人の悲痛な勤勉と、彼らが生活資料獲得のために頼るところの、他国には知られぬ諸々の工風考案を記述した後、曰く、『しかし、支那住民の非常な真摯と勤勉とにもかかわらず、彼らの中の莫大の数の者がひどく窮乏に苦しんでいることを、告白しなければならぬ。彼らの中のある者は、貧しくてその子供に普通の
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