は許されない。『指定の第一の目的が法に基づいて達せられれば、この兄と妹は父と娘の如くに睦じく共棲しなけれぱならぬ1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。』
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 343.
[#ここで字下げ終わり]
 マヌウの法典のほとんどあらゆるところで、あらゆる種類の肉欲満足は力強く排斥されており、そして貞節は宗教的義務として訓《おし》えられている。
『人は肉欲的快楽に愛着すれば罪過を招き、これを全く克服すれば天の悦楽を得る。』
『いかなる人がこれら一切の満足を獲得するにせよ、またいかなる人がそれを全く抛棄するにせよ、一切の快楽の抛棄はその獲得よりも遥かに善い1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。』
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. vol. iii. c. ii. p. 96.
[#ここで字下げ終わり]
 かかる章句はある程度、前述せる増加に対する奨励を打消す傾きがあり、そして若干の宗教心の厚い人をして、一人の息子をもてばそれ以上に耽溺を控えさせ、またはかかる法令のない場合よりも喜んで未婚の状態に止まらしめるものと、考えてよい。厳格な絶対的な貞節は、実際、子孫を持つという義務に打克つように思われる。
『無数の婆羅門は、幼時から肉欲を避け、その家族に一人の子供も残さなかったが、しかも彼らは天国へ昇った。』
『しかしてかかる禁欲男子と同様に、有徳の妻は、子供がなくとも、主人の死後敬虔な厳粛に身を捧けるときは、天国に昇る1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。』
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. c. v. p. 221.
[#ここで字下げ終わり]
 兄弟または他の親族が死んだ夫のために相続人を設けることが許されると前に述べたが、これはただ奴隷階級の女子にだけ行われることである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。上流階級の女子は、他の男の名を口にすることさえ出来ぬばかりでなく、『死があらゆる罪障を恕《ゆる》すまで、辛い義務を履行し、あらゆる肉欲的快楽を避け、かつ悦んで比類なき道徳律を実践しなければならぬ2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。』
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. c. ix. p. 343.
 2)[#「2)」は縦中横] Id. c. v. p. 221.
[#ここで字下げ終わり]
 情欲の統御に関するかかる厳格な教義の外に、なお他の事情が、おそらく、結婚を奨励する律令が十分にその効果を挙げることを、妨げているのであろう。
 人民は階級に分たれており、同山家族は同一職業を世襲するので、この事情は各個人に、生計に関する将来の見通しを明白に指示することとなり、そして父の収益から見て、同じ職業で家族を養っていけるか否かを容易に判断し得ることであろう。そして彼れの階級に適する職業で生活が出来ない時には、ある制限の下で、他の職業に生活を求めることは許されているが、しかしこの便法に頼る時にはある種の恥辱が伴うように思われる。そして、かくの如くにその階級から脱落し、このようにはっきりとその生活条件を低下しなければならぬことが確実にわかっていながら、なおかつ多数のものが結婚するとは、考えられぬことである。
 これに加うるに、妻の選択は非常に困難な点であるように思われる。男子はかなりの間未婚でいなければ、立法者が規定しているような伴侶がなかなか見附からぬであろう。ある種類の家族は、それがいかに豪家であっても、またいかに牝牛や、山羊や、羊や、金や、穀物に富んでいようとも、努めてこれを避けなければならぬ。髪が少なすぎるかまたは多すぎる娘、おしゃべりのすぎる娘は、いずれも排斥される。そして選択が必然的に、『その姿体に欠点がなく、良い名前をもち、フェニコプテロスまたは若仔象のように優雅に歩み、髪や歯は量から云っても形から云っても適度であり、体躯は何とも云えず柔軟な1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]』娘に落附かなけれぱならぬというのであってみれば、この選択はある程度の制限を受けることがわかるであろう。
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. vol. iii. c. iii. p. 120.
[#ここで字下げ終わり]
 適当な配偶者を見出すに最大の困難がある時ですら、奴隷階級の女子が婆羅門またはチャトリアの妻として挙げられたことは、どんな昔の物語にも載っていないと記されているが、これはかかる困難が時々起ることを意味するように思われる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 121.[#「.」は底本では欠落]
[#こ
前へ 次へ
全98ページ中75ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング