煤u1)」は縦中横、行右小書き]。これは、火災に対して安全である上に、流行病の発生を妨げその蔓延を阻止するに非常に適している。『彼らはほとんど皆一人の妻で満足している。夫婦関係は厳重峻厳であり、そしてこの点に関する彼らの行状は最高の賞讃に値する2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。彼らは貞操のよく保護される状態で暮しており、挑撥的な観せ物や享楽の魅惑で紊《みだ》されることはない。姦通は極度に稀であり、売淫に耽るものはない。美しさも、若さも、富も、夫を得るには何にもならぬ。けだしそこでは罪悪を笑って看過する者はなく、相互誘惑を世上の途とする者もいないからである。子供の増加を制限すること、または夫の血統を一人でも失うことは、不名誉とされる。そしてそこでの道徳的行状は、他地方の立派な法律よりももっと効力がある3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。あらゆる母は自分の子供を哺育し、それを召使や乳母に委ねることはない。青年は晩《おそ》く性交渉を始め、従って青春期を消耗させずに送る。処女が犯されることもない。同一の成熟と同一の成長が要求される。よく均衡した強壮な両性が結合し、そして子供は両親の勢力を継承する。血縁者と親戚が多ければ多いほど、その老後は幸福であり、子供のないのは何らの利点でもない4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Tacitus de Moribus Germ. s. xvi.
2)[#「2)」は縦中横] Id. s. xviii.
3)[#「3)」は縦中横] Id. s. xix.
4)[#「4)」は縦中横] Id. s. xx.
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かかる行状と、冒険及び移住の習慣を有ち、そしてそれは当然に家族扶養に関する一切の憂慮を取り除くであろうから、これ以上強い人口増加の原理を有つ社会を考えることは困難である。そして吾々は直ちに、ロウマ帝国の軍隊がかくも長期間苦戦し、遂にそのために滅びてしまったところの、後から後から引続いた軍隊及び移民の多産的な源泉がわかるのである。ゲルマンの領域内の人口が、二度続けて、または一度ですら、二十五年で倍加したことがあるとは、思われない。彼らの不断の戦争、粗放な農業状態、なかんずくこの種族の大部分が採用している、自分のまわりに広い荒地をまわす奇妙な習慣は1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、その人口が実際大いに増加するのを妨げるであろう。この国は人口が過剰のことはしばしばあったが、ちょうどよい人口を有ったことは一度もあり得なかったであろう。彼らは狩猟を行うために広大な森林を放置し、その土地の大部分を牧場に用い、残ったわずかの土地を粗放な農耕に宛て、そして飢饉が囘《めぐ》って来てその資源の乏しいことを教えると、彼らはその住民大衆に食物を与えないその国土の不毛を責めたが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、しかしその森林を開き、沼沢を通じ、その土地を増加せる人口を養うに適するようにはせずに他国へ『食物を、掠奪品を、または名誉を求めに行く3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]』のが、彼らの好戦的な習慣と短気な気質に合したのである。これらの冒険者は、自己の剣によって自分の土地を得たか、または色々な戦争中の出来事で斃《たお》れたか、ロウマの軍隊に入られたか、またはロウマの領土に散ってしまったか、またおそらくは分捕品をもって帰り、減少した人員を補充した後新らしい遠征の準備をした。人間の補充は極めて迅速であり、あるものが植民地にやられ、または戦争と飢饉で薙ぎ倒されると他のものがより[#「より」に傍点]以上これを補充するという有様であったように思われる(訳註)。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Cae&sar de Bell. Gall. vi. 23.〕
2)[#「2)」は縦中横] Gibbon, vol. i. c. ix. p. 360.
3)[#「3)」は縦中横] Id. vol. i. c. x. p. 417.
〔訳註〕最後の一文はおおむね第一版より、1st ed., p. 50.
[#ここで字下げ終わり]
問題をかくの如く見るならば北部地方は決して消尽され得なかったのである。そしてロバトスン博士は、かかる侵入の及ぼす災害について述べて、それは、北部地方が順次に大群を送り出したために人間が涸渇し、そしてもはや破壊者を提供し得なくなるまでは、止まなかった、と述べているが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、これは彼が論破せんと努めた誤謬そのものに陥るものであり、そして北方民族は実際に非常に人口が多かったということになるのが、わかるであろう。けだし、戦争の殺戮にもかかわらず、ある時期
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