」に傍点]少い、アメリカの北部諸州においては、人口は、一世紀半以上も引続いて、二十五年以内に倍加したことがわかっている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかも、この期間内ですら、都市のあるものにおいては死亡は出生を超過したが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、これは、この不足を補充した地方においては、増加は一般平均よりも遥かに急速であったに違いないことを、明かに証明する事情である。
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 1)[#「1)」は縦中横] ある最近の計算と見積りによれば、最初のアメリカ植民から一八〇〇年に至る間において、倍加期間は二十年をやや上廻る程度でしかなかった。第二篇第十一章におけるアメリカの人口の増加に関する註を参照。(訳註――この註は第三版より現る。なお本文の前半は 1st ed., p. 20. から加筆の上第二版に採用され、更に全部は第三版にて若干加筆さる。)
 2)[#「2)」は縦中横] Price's Observ. on Revers. Pay. vol. i. p. 274, 4th edit.
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 唯一の職業は農業であり、そして悪習や不健康な職業はほとんど知られていない、奥地の植民地においては、人口は十五年にして倍加したことがわかっている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この異常な増加でさえ、おそらく、極度の人口増加力には及ばないであろう。新しい国を開発するには非常に過酷な労働が必要であり、かかる場所は一般に特に健康的とは考えられず、またおそらく住民は時々インディアンの襲撃を受けるであろうが、これは若干の人命を損じ、またはとにかく勤労の結果を減少することであろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] Price's Observ. on Revers. Pay. vol. i. p. 282, 4th edit.
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 出生の死亡に対する比が三対一の比例である場合に、三六分の一という死亡率に基いて計算された、オイラアの表によれば、倍加期間はわずか一二年五分の四であろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかもこの比例は、啻《ただ》に蓋然的な仮定であるばかりでなく、一国以上において短期間に実際起ったところのものである。
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 1)[#「1)」は縦中横] 第二篇第四章末尾の本表を参照。
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 サア・ウィリアム・ペティは、倍加は、十年というが如き短期間に可能である、と想定している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Polit. Arith. p. 14.
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 しかし、吾々が全く確実に真理の範囲内にあらんがために、吾々は、これらの増加率の中で最もおそいもの、すなわち一切の共在する証言が一致し、そして生殖のみによるものなることが繰返して確証された一つの率を、とることとしよう。
 従って私は、人口は、妨げられない時は、二十五年ごとに倍加し続け、または幾何級数で増加する、と云って間違いなかろう(訳註)。
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〔訳註〕これとほとんど同一文は 1st ed., p. 21. にある。
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 土地の生産物が増加すると想像される比率を決定することはそれほど容易ではないであろう。しかしながら、これについては、限られた領域におけるその増加率は、人口増加率とは、全然その性質を異にしなければならぬ、と全く確信し得よう。十億人は一千人と全然同じく容易に人口増加力によって二十五年ごとに倍加される。しかし、この大きい方の数字から生じた増加分を養うための食物は、決して小さい方のそれと同様に容易には獲得されないであろう。人間は必然的に余地によって制限される。一エイカア一エイカアと加えられて遂に一切の肥沃な土地が占有された暁には、年々の食物増加は、既に所有されている土地の改良に依存しなければならぬ。これは、一切の土壌の性質上、逓増はせず、徐々に逓減するところの、基金である。しかし人口は、食物がそれに与えられるならば、少しもその力を減ずることなく増加し続け、そしてある時期の増加は次の時期にはより[#「より」に傍点]大なる増加力を与え、かくてはてしなく続くであろう。
 支那や日本について記したものから見ると、人類の勤労をいかによく向けてみたところで、これらの国の生産物は多年を経て一度ですら倍加し得ようかと、立派に疑うことが出来よう。なるほど地球上には、今まで耕作されず、またほとんど占有されていないところが、たくさんある。しかし、これら人口稀薄な地方の住民でさえ、これを絶滅し、またはこれを餓死するに違いない一
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