ソに生じて来るが、この何らかの不平等がある場合には、食物の不足により生ずる困窮は、社会の中最も恵まれない人々の上に最も強く落ちて来る。この困窮はしばしば女子をも襲ったが、けだし女子は夫の不在中に不意の掠奪の危険に曝されており、またその帰宅を待ってもいつも失望しなければならなかったからである。
『しかしこれら民族の詳細な歴史を十分に知らないので、正確にどの部分に食物の不足の困苦が主として落ちて行ったか、またどれだけそれが一般の負担となったかは指摘し得ないとしても、私は、牧畜民族について吾々が有っている一切の記述からすれば、移住やその他の原因によって生活資料が増加した時には彼らの人口は常に増加し、そして窮乏と罪悪とによってそれ以上の人口増加は妨げられ現実の人口は生活資料と等しくされていた、と立派に云うことが出来ると考える。
『けだし、女子に関して彼らの間で広く行われていたと思われる悪習は、常に人口増加に対する妨げたる作用を演ずるものであるが、これを別としても、思うに、戦争の遂行は罪悪であり、またその結果は窮乏である、と認められなければならず、そして窮乏が食物の不足の結果たるは何人も疑い得ないところであるからである。』
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第八章 アフリカ各地における人口に対する妨げについて
アフリカのある地方を訪れたパアクは、その地方がよく耕やされてもおらず、また住民も多くはない、と述べている。彼は、広い立派な地域の多くに、全く住民がいないのを見た。そして一般に各国の辺境は人口が極めて稀薄であるか、または全然人影がなかった。ガンビア河、セネガル河その他の河の海岸寄りの湿地帯は、不健康であるために、人口には不適当に思われた1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし他の地方はこれと種類を異にしており、そして、土壌が驚くべきほど肥沃なことを見、労役用にも食用にも適する大きな畜群を見、更に広大な奥地水運の便のあることを考えてみると、かくも自然の恩寵に恵まれた国が、現在の蒙昧な放置された状態に依然として止っているのを嘆かざるを得ない、と彼は云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Park's Interior of Africa, c. xx. p. 261. 4to.
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