オは1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、その人口が実際大いに増加するのを妨げるであろう。この国は人口が過剰のことはしばしばあったが、ちょうどよい人口を有ったことは一度もあり得なかったであろう。彼らは狩猟を行うために広大な森林を放置し、その土地の大部分を牧場に用い、残ったわずかの土地を粗放な農耕に宛て、そして飢饉が囘《めぐ》って来てその資源の乏しいことを教えると、彼らはその住民大衆に食物を与えないその国土の不毛を責めたが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、しかしその森林を開き、沼沢を通じ、その土地を増加せる人口を養うに適するようにはせずに他国へ『食物を、掠奪品を、または名誉を求めに行く3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]』のが、彼らの好戦的な習慣と短気な気質に合したのである。これらの冒険者は、自己の剣によって自分の土地を得たか、または色々な戦争中の出来事で斃《たお》れたか、ロウマの軍隊に入られたか、またはロウマの領土に散ってしまったか、またおそらくは分捕品をもって帰り、減少した人員を補充した後新らしい遠征の準備をした。人間の補充は極めて迅速であり、あるものが植民地にやられ、または戦争と飢饉で薙ぎ倒されると他のものがより[#「より」に傍点]以上これを補充するという有様であったように思われる(訳註)。
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] 〔Cae&sar de Bell. Gall. vi. 23.〕
 2)[#「2)」は縦中横] Gibbon, vol. i. c. ix. p. 360.
 3)[#「3)」は縦中横] Id. vol. i. c. x. p. 417.
〔訳註〕最後の一文はおおむね第一版より、1st ed., p. 50.
[#ここで字下げ終わり]
 問題をかくの如く見るならば北部地方は決して消尽され得なかったのである。そしてロバトスン博士は、かかる侵入の及ぼす災害について述べて、それは、北部地方が順次に大群を送り出したために人間が涸渇し、そしてもはや破壊者を提供し得なくなるまでは、止まなかった、と述べているが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、これは彼が論破せんと努めた誤謬そのものに陥るものであり、そして北方民族は実際に非常に人口が多かったということになるのが、わかるであろう。けだし、戦争の殺戮にもかかわらず、ある時期
前へ 次へ
全195ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング