そこにおける社会状態の研究に立入らないうちに、不断の奇蹟が女子を不姙にしているのでない限り、人民の習慣の中に、人口に対するある極めて有力な妨げを辿り得るであろうことを、確信し得るはずである。
 オウタハイトとその近隣の諸島に関して吾々が得ている数多の報告によって見れば、文明諸国民の間にかくも大きな驚駭《きょうがい》をひきおこしたエアリイオイ社1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]なるものが存在することには、疑問の余地がない。これについては今までたびたび述べられているから、乱交と殺児とがその根本律であるらしい、という以外には、ここでは述べる必要はない。それはもっぱら上流階級から成り、『そして』(アンダスン氏によれば2)[#「2)」は縦中横、行右小書き])『この淫蕩な生活方式は非常に彼らの性向にむくので、最も美しい両性は通常その青春の日をかくの如くして費やし、最も蒙昧な種族といえども恥辱とするような極端な行いをしているのである。……エアリイオイ社の女が子供を産むと、水にひ[#「ひ」は底本では「び」]たした布を鼻と口に当てて窒息させるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。』キャプテン・クックは曰く、『かかる社が、その成員をなす上流階級の増加を大いに妨げることは確実である4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。』この言葉が本当であることには疑はあり得ない。
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] Cook's First Voyage, vol. ii. p. 207, et seq. Second Voyage, vol. i. p. 352. Third Voyage, vol. ii. p. 157, et seq. Missionary Voyage, Appendix, p. 347. 4to.
 2)[#「2)」は縦中横] アンダスン氏はクックの最終航海に博物学者及び外科医として働いた。キャプテン・クック及びこの探検に参加した士官は、彼れの才能と観察眼に非常に敬意を払った。従って彼れの記述は最高の権威あるものと考えてよかろう。
 3)[#「3)」は縦中横] Cook's Third Voyage, vol. ii. p. 158, 159.
 4)[#「4)」は縦中横] Id. Second Voyage, vol. i. p. 352.

前へ 次へ
全195ページ中62ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング