な作り出したいものと心がけていたが、ある日初めてシュークリームを食べて美味しいのに驚いた。そしてこのクリームを餡《あん》パンの餡の代りに用いたら、栄養価はもちろん、一種新鮮な風味を加えて餡パンよりは一段上がったものになるなと考えたのである。
 早速拵えて店に出すと案の定非常な好評であった。それからワップルに応用し、ジャムの代りにクリームを入れて見たのである。ちょうどこの試作の時に島田三郎氏が折よく見え、早速一つ試食を願うと『これは美味しい、いいものを思いついた』と氏も賞讃され、店に出すと果たしてこれもよく売れた。
 クリームパンとクリームワップルはその後他の店でも作るようになり、今日ではもうありふれて珍しくもないが、こんなに拡がって日本全国津々浦々まで行き渡ったことは、私として愉快に感じる。
 なおこのついでに葉桜餅のことを言っておくのも無駄ではあるまい。これはだいぶ後で、大正も終りの方のことであった。五月も十日頃、我が淀橋町の役場から電話で、小学校生徒のために赤飯一石五斗の註文があった。ちょうど私が店にいたので電話で註文をきき、早速|糯米《もちごめ》を水に浸けるように命じて帰宅したの
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