なれば互いに自分の領分に籠り、また実際担任以外の仕事に及ぶことは困難に相違ないが、それでは製品の筋道が判らず、自信をもって顧客に進めることが出来ません。それで私は現在中村屋の軍鶏《しゃも》の肥育飼いと牛乳について少し話をしておきます。
 中村屋で鶏というのは軍鶏のことで、鶏肉としてはこれが最上の品です。まず雛鶏を六ヶ月ぐらい飼育しておき、それから三、四週間暗室の独房(バッターリ)に一羽ずつ入れ、滋味あるどろどろの餌を管を通して与える。運動を止められるので鶏は肥って肉は柔かになる。これがすなわち肥育飼いです。こうして鶏が卵を生む性能が出て溌剌として見事な若鶏となるのを待ち、まだ雌雄接しないうちに鶏舎から中村屋の料理室へ毎朝提供されるのです。
 この鶏舎は初め甲府市外の素封家河野氏邸にあって、令息豊信氏がシェパード犬を愛育する傍ら鶏を飼って居られたものです。豊信氏は安雄とはシェパード犬研究のお仲間で親交あり、中村屋の仕事をよく理解して趣意に賛成せられ、私どももついにこの方に中村屋鶏舎場の場主兼経営者として、協同協力をお願いすることになったのです。その後仕事が大きくなって千葉地方の広い所に鶏
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