くなる、何となく鑑別《みわけ》が出来てほんとうによい作品の前には、自然と頭が下がるようになります。これに反し、これこそ立派な作品だといって示されても一向解することが出来ないなどは、いささか恥ずべきものであります。
 すぐれた絵や彫刻により、また建築あるいは家具装飾の高雅な趣味によって情操を養われ、洗練されれば、営々としてやむことなき生活戦線に疲れた時でも、機械化した工場に働く中でもどことなく心に余裕を保ち、まして夕ぐれ憩いの時が来れば、新月のさやかな光りも心にしみ、暁霜を踏んで工場に急ぐ時も頭上にかがやく明星に、若いあなた方の胸は歓喜に充たされるでしょう。私どもは何よりもまずよくものを感じ得る心にならねばなりません。その大いなる導きとして私はあなた方の前に、一つの額一枚の皿をも心して備えたいと思うのであります。

    年末ちん餅の思い出

 年末のちん餅についても、あらゆる科学と機械とを利用した現在の中村屋と、昔日の中村屋とを比較して、まことに隔世の感なきを得ません。
 昔は節季の餅は搗《つ》きのわるいものとして、おとくいも餅屋も通用して来たものですが、私たちが初めてちん餅をやった
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