込のある所は権利金だけでも数千円で、現に新宿目ぬきの場所は、間口一間当りの権利金が一万五千円から二万円という驚くべき高価に上がり、その他どこに行っても新たに店を持つことは昔よりはるかに困難となったのである。また一方には幾千万円の大資本を擁する百貨店が出現し、これが郊外遠くまでも配達網を布いての活躍で、小商店に一大脅威を与えており、これと戦って敗けずに行くには余程の覚悟を要するのである。
また昔は僅々数十円の小資本でも、機に乗じ才智によって成功した例もあったが、今より後はかかる僥倖は望むべきでなく、何事も合理的方法によるほかない。
それゆえ諸君は仮りにも夢を見てはならないのであって、奉公先を一生の親柱と頼み、すがってさえいれば何とかなるという時代ではないことをしっかり自覚し、そこに真剣な修業の覚悟が必要である。とにかく私として諸君に望むところは、諸君が我が中村屋を商業研究の道場と心得、仕入れ、製造、販売の研究はもちろん、朋輩に交じわる道、長上に対するの礼、人の上に立つ心得等に至るまで、充分に習得して真に一店の主人、一製造場の長たり得る資格を備え、いかなる苦境も自力で開いていくだけの人
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