さることを、真実に有難く思わなくてはならない。もとより店の発展は一朝一夕に招来されたものでなく、そこには三十七年の歴史があるが、しかもその長き年月の間には、努力しながら衰微して行った店も少なくないであろう。それを思えば中村屋はまことにもったいない幸せである。こうして共存共栄を願望すべき小売店として、一軒があまり大を成すことは考慮すべき問題ではなかろうか。
我々のこの想いはすでに昨年末、ちん餅の価格を定める時にも問題となり、ようやくその一端を現したようなことであった。すなわち中村屋の餅は最上の新兵衛餅ひとすじであって、一般向きに備えているのではないから、御註文下さるのも自ずからきまった範囲のお得意である。これは餅に限ったことでなく、何品でも中村屋の製品はなるべく一つの分野に止め、他店の領分を侵さぬ方針なのである。しかもそれでも歳末のちん餅が比較的安く、そのため近所同業に迷惑を与えるというのでは、考えなくてはなるまい。そこで昨冬は、のし餅一枚につき一般の店より売価をおよそ十銭高くなるようにつけ、その代り目方で気を付けておいたようなことであった。
ちん餅一つにしてもこれだけの心配りを要す
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