。その行いは厳正にして寡慾、天晴の名僧善智識として多数人の尊敬を受けていた。するとこのバラバに金を捧げる者が続々と出て、私の知人で十数万円も献金した者もありました。その結果、最初は質素高徳であった坊さんが、何時か金襴[#「金襴」は底本では「金欄」]の衣をまとい、玉堂に住み、美人を侍らせるに[#「侍らせるに」は底本では「待らせるに」]至って、たちまち世の信用を失い、悲惨な末路を遂げたことがあった。実に金銭有用なものはなく、また金銭無用なものはないのであって、いったん無用の使い途に入ると、かくの如く人を堕落せしめる。
 それゆえ、子孫のために美田を買わずという西郷隆盛の教えを考えて見ることが必要である、もしまた巨万の富を得た場合には、真に有意義なる道を見きわめてはじめてそこに活用し、禍いの種を家におかぬのが最上策というべきである。しかし人情の常としてかかる英断は容易に行われにくいのであります。そこに大資産家の子孫教育のなやみもあるのであって、如何にせば子孫をしてその富を社会に活用せしめることができるか、順境に育った子孫にあやまりなく金を使わせることはまたいっそう難しいのであります。
 およ
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