たお客への風味、店員の試食などを加えれば、最少限度一割くらいの減損を見込まなくてはならぬ。それゆえ商売の利幅を二割と見てもすでにその半ばを失っており、残余の一割で店員のすべてを賄うこととなるのであるから、商売も全く容易でない。しかし商売の経験のないものは、この減損の大きいことを知らない、普通二割の利益ときいて儲かるものだなあと思い、自分がやればそんなに儲けないでずっと勉強することが出来ると考える。これまた勘定合って銭足らずの原因をなすのである。
 もっともこういう誤りは素人だけにあるのでなく、商工省あたりの官吏なども、二割の利益をもって暴利とし、これを取締るべしなどと論ずるのを見受ける。さらに驚くべきは、商人の実際を相当理解しているはずの税務吏が、一般個人商店の経費や諸欠損をきわめて少額に見積り、これと利鞘との差額を一割五分ありとなし、これを全部純益と認定して課税するなど、相当教養ある人々にしてなおこの有様である。諸君が新たに仕事をする時は慎重の上にも慎重を加え、計算の精密を期さなくてはならん。事業の成否は懸ってこの一事に在るものである。

    金の使いよう

 私は決して諸君の経
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