る。
 すべて日本人の弱点として、アメリカやイギリスを真似て得意がると同様に、地方ではやたらに、「東京を真似る」ので地方の特色を失って行く。封建時代は地方地方の名産がまことに特色があり、如何にもその土地らしいにおいがして、ちょっと旅をしてもどんなに趣き深いことであったろう。それが現在では日本が一律に単調化し、平面化し、ますますその味わいを失って行く、文明、人物、みなこの名物の例に異らずである。
 また日本の「イチゴ」は世界一である。日本の土地柄として水蒸気の多いことが原因するのである、また日本の果物もオレンジ(米国第一)を除いて他は世界で最も優れている。「イチゴ」がそんなに上等であるのに、日本出来のイチゴのジャムは相手にされない、アメリカ産の一斤入り瓶詰が二円、イギリス産BCが一缶八十銭であるのに、日本産は三十銭というみじめさである。それだけ値が違ってもいまだに舶来品が輸入される。世界一の原料を持つ日本が何故に悪い製品より出来ないかというに、問屋が製造家をあまりに攻めすぎるからではなかろうか。
 私は昨年から、一粒選りのイチゴを最上のザラメを用いて、一缶につきおよそ三四銭余計にかけて三
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