いえません。やはり職長という地位に立つからには、部下をよく使うことが第一であって、各自の長所短所を知って、これを人によって然るべく教え導き、適宜に按配して能率の増進を計るべきであります。
 職長はまた、自分の知識を絶えず養い、時代に後れぬようにしなくてはならない。職長となるまでには相当苦労を積まねばならないから、たいてい四十代から五十代という年齢で、部下の青年の方が新しい教育を受けているから、学問の程度では職長の方が落ちる場合が少なくない。ちょうど家庭で高等の教育を受けた息子や娘が、両親の時代遅れを笑うのと同様に、職長も何時部下から突込まれるかも知れません。それでは互いに面白くないから、職長ともなれば少なくとも自分の従事する仕事に関する範囲では日夜注意して知識を養い、一歩も人に譲らぬだけの自信を持つことが大切であります。
 以上、私は職長として六つの場合を注意したが、まずこれで職長学の卒業はやや近づいたものでしょう。しかしまだ一つある。職長は部下に対してあくまで公平でなくてはならない。自分の好き嫌いで部下を分け隔てしたり、自分がつれて入った者を引立てて前からいる者を継子扱いするなどのこ
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