いかん、次男は反抗的で困り者だ、三男だけがよく言うことを聞き、才能もあるようだとなると、ついこの三男を偏愛する、というような実例はどこの家にもありがちであります。
同じ血を分けた子供に対してさえそうなのですからまして多くの使用人の中には無愛嬌で触りのわるい者もあれば、働きの割に結果の上がらないような損な生れの者もあり、また如才なくてかゆいところへ手の届くような者もあります。虫のすく好かんということもあり、つい一方を重く用い、一方を疎かにする弊に陥りかねないのであります。ところが事実はどうかというと、無愛想でごつごつしているような人間の方が仕事に忠実であって、要領のよろしい才物は往々にして横着者であります。
それゆえ、主人は根本的に人を見る明が必要であると共に、真に一視同仁でなくてはならないのであります。が、これがなかなか困難なことで、決して口で言うようにはまいりません。平常人事を行うに充分公平を期しているつもりでも、その結果は、どうかこうか公平に近いという程度に止まるのであります。
それでまだ主人直き直きに行えば、まずまず大きな間違いはないとしましても、もしこれを番頭にまかせ、支
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