れ、貴様から一度もものを買った覚えがない、毎度有難うとは何事ぞと戸も荒らかにピシャリし切って奥へおはいりになったとか、これ店員の憤慨談であった。いずれ常識を欠いている当世の学者でもあったろう。
 またある令夫人は御自分の御機嫌のわるい時、あるいは家内に混雑なことでもある時、電話で注文があるとその時電話係に当った店員こそ迷惑である。如何に顔の見えない電話であるといえ理由なく叱りとばされて挨拶に困ることがたびたびある。自分も一度このお叱りに出遇ったが、あまり愉快なものではない。またある人は配達小僧をつかまえて、下女の代りに水を汲ませたり、使いにやったり勝手なことをする。
 中にはまた、壜詰缶詰などの口を切って売物にならないものを引取れという人がある。ことにコンデンスミルクなどのように、一缶について三厘もしくは五厘の手数しかない薄利のものを、不用になったから引取れの、価を引けという難題を持ちかけられて、商人が立ち行かれるものであろうか。これより甚だしいのは半日か一日ぐらいしか保たない生菓子を注文しておきながら急に不用になったという場合。あるいは食パンなど急に追加注文になって我が店だけでは間に
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