も覚えないくらいの新参であったが、現に前の店員よりも好成績を得ている。この小僧は特にお世辞はいわない。また安売りして客をひきつけるというような策があるのでもないが、顔がまるまる肥っていて、一種の愛嬌があり、誰しもこの小僧にはちょっと言葉をかけて見たくなるような気がするのである。しかしながら福相につくろうとしても人工で出来るものでなくまた幸い出来たところが人工であるから不自然である。つまり客に対して商売以外に親切正直であるよう、この心掛けあってこそ自然口から愛嬌も出て顔容も福々しくなるのである。
商人の自尊心と商業の快味
店頭からオーイ姐さんパンを二貫だけおくんなと怒鳴り込む車屋さんの意気もとくと呑み、やたらにお前よばわりをし給う八字髯様の横柄さ加減も見馴れ、お客様というものはすべてこうしたものと覚え、かえってものやさしくいたわるる時は有難すぎて勿体なく、きまり悪しきこともあるが、時には勘忍袋の緒も切れるかと思うこともある。
我が店員の一人、ある家に御注文伺いした時、毎度有難うという。商人が客に対して捧呈すべき御挨拶を言上せしところが、当家の御主人わざわざ台所へお顔を出さ
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