いたものであるが、主人の得意をすぐって自分の得意とすることが出来た。これも平素誠実に働き充分信用を得ておいたからであって、ほとんど無資本でしかも主人と異なった商売をして、立派に成功したのである。これに反してある粉問屋に七八年の年期を終えて、ようやく一人前の若者となった人があった。主人は若干の慰労金を与えていうに、お前は開店しても決して我と同業を営んではならぬ。よろしく他に商売を求めよ。それで若者はやむを得ず白米屋を開業したが、米を識別する鍛錬がなかったのと資本の薄いために、たちまちにして失敗し、今はどこに潜んでいるか影さえ見たものがないという。

    職人小僧は如何に導くべきか

 従来の職人は実に忌むべき癖を持っていた。いわゆる職人根性とて、一種の痼疾となっているものである。すなわち労働時間と休み時間の区別なくて、甚だ自堕落で横着なのである。仕事にとりかかっているのに、煙草吸うては手を休め、またそのうちに仕事にかかり、またしばらくして煙草を吸う。かくの如くにして半日で終らすべき仕事もわざわざ一日を費すのである。つまり職人自らこのくらいの仕事をなせばよいのだときめ込んで、ただ時間を
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