感嘆措く能わざるものがある。専門の外交官も三舎を避けねばならぬ。かくの如く内憂外患の難局に処して種々の修養を積み、又幼少の時代よりその事業に就き、しかも様々の経験と訓練を経ているので、たとえ中途で事業に蹉跌することがあっても、日頃の鍛錬はたちまち勇気を喚起[#「喚起」は底本では「換起」]して、元の位置に復することあたかも不倒翁の如くである。七転び八起きということは、実に彼等小僧上りの商人の常態である。無論小僧上り必ずしも成功するものと限っているのではないが、少なくとも苦労を知らぬ学校出や、気まぐれに面白半分に実業熱にうかされる素人とのとうてい我慢の出来ないところを平気で切り抜け、また客に対してきわめて腰の低いのは、確かに成功に欠くべからざる要素を持っているといわねばならぬ。
日本橋のある町に、仏蘭西の香水香油等化粧品いっさいを売って、大繁昌をきわめている一商人がある。初めこの店の主人は、少しく思う所があって、学校出身者中よりいわゆる秀才の聞こえのある者ばかり数名を選び、これに月給二十五円ないし四十円を与えて番頭となし、行商をなさしめたところが、幾月たっても成績があがらないので、主人は
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