て忠実に働いていたが、ある時係長の一人が、会社内に山の如く堆積してあった皮革の積を調査すべく来た。しかるにこの新米の学生上りの労働者も進みより、方程式により計算せしを、その係長が見とがめて、汝もこの方程式を知って居ったか、それほど学問のあるものが、何故かかる労働に従事しているのであるかと怪しみ尋ねた。彼の労働者はすなわちありのままの事実をもってこれに答えた。ところがその係長は驚き且つ感心して、終に社長に謀りて、彼を労働者中より抜擢して而して破格の位置を与えて彼の敏腕を思う存分振わしめた。而してこの大会社の現社長某氏の前身がこの学生労働者であったという。
小僧上りに立身者多き理由
前項に反して小僧上りの者は、鼻垂時代から厳格な主人の監督の下に、ちょっとの油断なく仕込まれ、父母の膝下では到底味い得られない辛酸を嘗め尽した者である。又いかなる場合にも主人に向って反抗的態度に出ることを許されず、客の難題に対してもつとめて御機嫌を損ぜぬよう、さりとて損はせぬようにうまく切り抜けることを学んでいる。ことにあの呉服屋、小間物屋など小面倒な女子供を相手の番頭や小僧の妙手腕に至っては、実に
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