すべての設備に贅を尽し美を華めるという有様でなければ、すなわち東京の真ん中に割込んで立派な商店として仲間入りは出来ない。かくの如く、店が繁昌すればするほど、地代家賃を引上げられ、また種々の設備に多くの資本を入れなければならぬゆえ、勢い都会における小売相場を上げざれば、とうてい維持することが出来ないのである。ゆえに東京市中でも最も繁昌を極めている銀座は、最も小売の高き場所として世人に知られる通りである。彼のニューヨーク、桑港の如きは、普通の小売相場はことに高く、ほとんど原価の倍である由なるが、彼の地としては当然の事と思われる。
 また東京市ほど小売相場の不同な所は他に類がない。同区内否同町内においてすら、甲店と乙店とは同じ品物の価に非常な差違のあることを発見する。それで高価の店も安価の店も同時多少の得意を有して、相当の収入を得つつあるは、我ら素人にはちょっと了解に苦しむところであるが、これすなわち東京は全国から各種各階級の人々の輻湊するところであって、ある区のある町はほとんど全市民が相往来するから、得意の種類は、いわゆる一遍のもの多数を占め、その範囲又極めて広きと、今一つは東京人は地方人
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